厚生労働省の「毎月勤労統計調査」によれば、1人当たり名目賃金は2014年にプラスに転じて以降、2018年まで増加が続いてきた。しかし、2019年の名目賃金は前年比▲0.3%減少、実質賃金は前年比▲0.9%減少となった。このため、内閣府がこのほど発表した「2019年の賃金動向」と題した今週の指標では、就業形態や労働時間の動きにも着目して、名目及び実質賃金の動向を分析している。
まず、名目賃金を一般労働者・パートタイム労働者別にみると、一般では0.3%増加、パートでは0.0%増加となっており、就業形態計の賃金が前年比マイナスとなったのは、全労働者に対するパートタイム労働者比率の上昇という構成変化が原因とみられる。パート比率の上昇は、所定内給与・所定外給与・特別給与いずれの前年比においても押下げ要因となっており、特に特別給与、所定外給与において押し下げ寄与が大きかった。
「毎月勤労統計調査」の賃金を評価する場合、サンプル替えに伴う水準変化等の影響にも留意が必要となる。これらの影響のない共通事業所の賃金をみると、2019年は概ね前年比プラスとなっていた。同様に共通事業所における年平均の支払項目別寄与をみると、所定外給与及びパートにおける特別給与の押下げ寄与があるものの、所定内給与が大きくプラスに寄与していた。
また、賃金を労働時間で除することにより時給換算すると、特に所定内給与は一般・パート共に労働時間が短くなっており、時給賃金はより高い伸びを示していた。共通事業所においても、同様の傾向がみられる。他方、実質賃金については、物価上昇が前年比マイナスへ寄与したものの、時給でみると、一般・パート共に前年比プラスとなっていた。
最後に、賃金・所得の動きについて、他の統計で確認すると、総務省「家計調査」でみた世帯主や、世帯主の配偶者の収入は増加、また、総務省「労働力調査」の1人当たりの仕事からの年間収入も、各雇用形態において前年比プラスとなっていた。以上のように、2019年の賃金動向を様々な角度からみると、その趨勢は公表主系列が示す数値よりも底堅さや増勢がみられ、所得面での景気拡張局面が続いていたことを示唆している。
ただし、2020年においては、3月以降に新型コロナウイルス感染症の影響による需給両面における経済活動の縮小が顕著になっており、所得面における悪影響が懸念される。今後とも、賃金の動向についても注視していくことが重要と指摘している。
同今週の指標は↓