新型コロナウイルス感染拡大の影響で確定申告の申告期限・納付期限が4月16日まで延長されているが、今年は申告に際し納税者の利便性に資する変更点が少なくない。まず、2019年度税制改正で国税関係手続きの簡素化が図られた。所得税の申告では、2019年4月1日以後に提出するものから給与所得、退職所得及び公的年金等の源泉徴収票や上場株式等の配当通知書、特定口座年間取引報告書など一定の書類の添付が不要とされた。
また、贈与税の申告では、2020年1月1日以後に提出する相続時精算課税の贈与税申告について、住民票の写しの添付が不要とされ、添付書類を準備する手間が軽減された。そのほか、2018年分から開始されたスマートフォンでの所得税の確定申告について、対象者の範囲が拡大された。2018年分の所得税の確定申告では、会社員など年末調整済みの給与所得者が医療費控除又は寄附金控除などの適用を受ける場合に限られていた。
しかし、2019年分からは2ヵ所以上の勤務先から給与収入がある人、年金収入や副業などの雑所得がある人及び生命保険の一時金など一時所得がある人も対象となり、社会保険料控除や生命保険料控除など全ての所得控除の適用を受けることができるようになった。また、スマートフォンでe-Taxを利用した電子申告を行う場合、ID・パスワード方式の場合には事前に税務署でIDとパスワードの登録手続きを行う必要がある。
しかし、マイナンバーカード方式の場合にはマイナンバーカードとスマートフォンに専用アプリをダウンロードすればe-Taxにより電子申告を行うことができる。2018年分の所得税の確定申告ではAndroid端末のみマイナンバーカードの電子認証を行うことができたが、現在ではマイナンバーカード対応のスマートフォンについても、マイナンバーカードの電子認証を行うことができるようになっている。
なお近年、税務行政の効率化や納税者の利便性の向上を目的にデジタル化が進められている。大法人については法人税・消費税の電子申告が義務化され、個人でも2020年分の所得税の確定申告からe-Taxによる電子申告又は電子帳簿保存のいずれかを行わなければ青色申告特別控除額が65万円ではなく55万円とされるなど税制上のデメリットが生じる。今後はe-Taxによる電子申告や電子帳簿保存がより増加するとみられている。