日本貿易振興機構(ジェトロ)が発表した「2019年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」結果(有効回答数3563社)によると、今後3年程度の海外進出(新規投資、既存拠点の拡充)方針は、「海外進出の拡大を図る」企業が全体の56.4%と前年度からほぼ横ばいに推移した。内訳は、「海外に拠点はなく、今後新たに進出したい」が25.5%でやや増加した一方、「海外に拠点があり、今後さらに拡大を図る」が30.9%に低下した。
今後、海外で事業拡大を図る国・地域(複数回答)は、「海外に拠点があり、今後さらに拡大を図る」企業のうち、「中国」を挙げた比率が48.1%と前年度(55.4%)から大幅に後退、5割を下回った。一方、次点の「ベトナム」は41.0%と初めて4割を超え、中国との差が前年度の19.9%ポイントから7.1%ポイントに縮小した。ベトナム以外のASEAN主要国では、タイ、シンガポール、フィリピンなどの回答比率も前年度から拡大を遂げた。
今年度に回答比率が大きく上昇したベトナムについては、同国でビジネスを行う魅力・長所として、「市場規模・成長性」を挙げる企業の割合が拡大を続けている。2019年度には86.1%と、データが遡れる2013年度(75.0%)から11.1%ポイント増加。その他の魅力・長所としては、「納入先集積」、「政治・社会安定」、「土地・事務所が豊富・安価」、「現地調達容易」などを挙げる企業が2013年度から増加した。
他方、今年度に回答比率が大きく低下した中国は、ビジネスを行う上での課題として、最多の60.8%の企業が「米中間追加関税措置」を指摘。今後、中国で事業拡大を図る企業の割合は、非製造業(前年度46.5%→43.2%)に比べ、製造業(同62.0%→51.8%)の落ち込みが大きく、米中貿易摩擦の影響がうかがえる。その他の課題としては、「政情・社会情勢・治安」、「知財保護」、「人件費高・上昇」、「代金回収」の指摘率が3割を超えて高かった。
米中貿易摩擦など2017年以降の「保護主義的な動き」(保護貿易主義)が自社のビジネスに与えた影響について、調査時点で「影響はない」との回答企業割合は、前年度調査の43.1%から37.2%へ低下。他方で、「全体としてマイナスの影響がある」は15.2%から20.1%へ増加した。なお、今後(2~3年程度)については、23.2%が「全体としてマイナスの影響がある」と回答したほか、「わからない」の割合が41.9%にのぼった。
同調査結果は↓
https://www.jetro.go.jp/news/releases/2020/ead10b5386ccd1e5.html