個人事業者等への源泉徴収における推計課税を明確化

 2020年度税制改正では、源泉徴収における推計課税が明確化される。申告所得税においては推計課税の規定が明文化されている一方で、源泉徴収については推計課税できる旨の明示的な規定はなく、その方法も確立されていないとされている。そのため、個人事業者等に対する調査の際に帳簿書類の提示がない場合など、その者における従業員別の給与の支払金額が不明である場合には、所得税の調査が困難な事例が発生しているという。

 そこで、今回の改正では、(1)源泉徴収義務者が給与等の支払に係る所得税を納付しなかった場合において、税務署長がその源泉徴収義務者からその給与等の支払に係る所得税を徴収するときは、その給与等の支払を受けた者の労務に従事した期間、労務の性質、その提供の程度その他の事項により、その給与等の支払を受けた者ごとの支払金額及びその支払の日の推計等をして、これをすることができることとする。

 また(2)税務署長は、上記(1)によりその給与等の支払を受けた者ごとの支払金額及びその支払の日の推計等をすることが困難である場合には、給与等の支払の日が各月末日であるものとし、給与等の支払金額の総額を給与等の支払を受けた者の人数で除し、これを給与等の支払金額の総額の計算の基礎となる期間の月数で除して計算した金額を、その支払を受けた者ごとの各月の給与等の支払金額として所得税を徴収することができることとする。

 さらに、(3)税務署長は、上記(2)の場合には、源泉徴収義務者の収入若しくは支出の状況又は生産量、販売量その他の取扱量その他事業の規模等により、給与等の支払金額の総額又は給与等の支払を受けた者の人数の推計をして、所得税を徴収することができることとする。(4)給与等のほか、退職手当等及び報酬・料金等並びに非居住者が支払を受けるこれらのものについても、同様の措置を講ずることとする。

 以上のように、今回の改正では、税務署長は個人事業者等における従業員別の給与の支払い金額の推計が困難である場合には、各従業員に同じ額の給与を支払ったものとみなして所得税を徴収することができることとし、推計により所得税を徴収できる旨が法令上明確化される。上記の改正は、2021年1月1日以後に支払われる給与等、退職手当等及び報酬・料金等について適用される。