19年印刷業の休廃業・解散436件、2000年以降最多

 東京商工リサーチがこのほど発表した「印刷業の休廃業・解散の動向調査」結果によると、2019年の印刷業の「休廃業・解散」は436件(前年比13.2%増)で、調査を開始した2000年以降で最多となった。全業種の「休廃業・解散」は、4万3348件(同7.2%減)と2年ぶりに減少に転じたが、印刷業は3年連続の増加で対照的な動きをみせた。また、2019年の印刷業の倒産は106件(同4.9%増)で、3年ぶりに増加した。

 2019年に休廃業・解散した印刷業を業歴別(判明418件)にみると、50年以上100年未満が109件(構成比26.0%)で最多。全業種では10年以上20年未満の構成比が20.8%で最多だっただけに、印刷業では業歴の長い老舗企業を中心に市場からの撤退が進んでいることが特徴となった。また、2013年は業歴10年未満が同11.6%を占めていたが、2019年は同7.1%まで減少。印刷業界は、新規参入の減少と老舗企業の退出が加速している。

 2019年に休廃業・解散した印刷業の直前期の決算は、64.7%の企業が黒字(当期純利益)だった。全業種の黒字率は61.4%にとどまり、印刷業が3.3ポイント上回っている。印刷業の黒字率は、2013年が59.6%、2017年が77.6%と年により変動するが、総じて6割以上で推移している。2019年の「黒字廃業」は64.7%に達したが、M&Aや事業承継などで新たな価値を創造できる余地を残すことも分かった。

 2019年に印刷業で休廃業・解散した企業は436社(前年比13.2%増)と、過去最多となり、企業倒産も106件(同4.9%増)と2年ぶりに増加し、1年間に約550社の印刷会社が市場から退出、淘汰される“冬の時代”を象徴している。また、今回の調査の特徴の一つとして、業歴の長い老舗印刷業者の休廃業が顕著だったことが挙げられる。これは顧客と築いてきた強固な関係が、時間の経過のなかで大きく変化してきたことを示している。

 ペーパレス化の流れで、印刷業界を取り巻く環境は年々厳しさを増している。ただ、発注元と印刷業者は長期的な取引になるケースも多い。一方、デジタル化の進展で、設備への投資負担や高齢従業員の業務対応が難しいとの声もある。顧客基盤や保有設備、従業員スキルなどを見極め、事業承継を探る丁寧な支援も重要となろう。 

 同調査結果は↓

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20200207_01.html