在米日系企業の黒字比率が8年ぶりに6割台に低下

 日本貿易振興機構(ジェトロ)が米国に進出する日系企業(製造業のみ)を対象に昨年10月から11月にかけて実施した「米国進出日系企業実態調査」結果(有効回答数670社)によると、2019年の営業利益見込みを黒字と回答した企業の比率(黒字比率)は66.1%となり、前年調査(74.5%)より8.4ポイント減少した。黒字比率が7割を切るのは、2011年度調査(67.5%)以来、8年ぶりとなる。

 景況感を示すDI(営業利益が前年比で「改善」した企業の割合から「悪化」した企業の割合を引いた数値)も大幅に悪化し、前年の17.2から▲4.6へと20ポイント以上下がった。業種別でも、黒字比率はほぼ全業種で前年調査時より低下した。中でも回答企業の2割弱を占める輸送用機器部品(自動車/二輪車)が52.3%となり、4年連続で低下(83.6→82.5→70.4→64.8→52.3%)したことが響いた。

 営業利益が悪化する要因を一つだけ挙げてもらったところ、1位は「現地市場での売上減少」(51.9%)で、2位の「(関税引上げなどの)貿易制限的措置の影響」(8.5%)を大きく上回った。中でも輸送用機器部品(自動車/二輪車)では、「現地市場での売上減少」を主因に上げた企業が6割にのぼる。米国の自動車市場では乗用車の売上・生産が減少しており、セダン向けを中心に日系部品メーカーの収益減少につながったものとみられる。

 他方、営業利益悪化の理由(複数回答)は、「現地市場での売上減少」(71.5%)に続き、「人件費の上昇」(38.7%)、「調達コストの上昇」(30.6%)などコスト要因を挙げる企業も多かった。コスト上昇につながる経営上の課題(複数回答)は、「労働者の確保」が68.8%で前年(69.0%)に続き筆頭要因となり、「賃金(給与・賞与)」が64.6%(前年65.6%)、「労働者の定着率」が49.8%(同46.3%)と続いた。

 日系企業においても、人手不足が顕著となっており、こうした課題への対応策(複数回答)は、「人件費以外の経費削減」(49.0%)、「社内コミュニケーションの活発化」(42.5%)、「労働環境の改善(福利厚生の改善など)(38.7%)」、「賃金の引き上げ」(37.7%)などが上位に挙がった。人件費以外のコストを削減 する一方で、福利厚生や賃金の引上げ、社員との意思疎通の改善などにより人材の確保に努めている様子が浮き彫りになった。

 同調査結果は↓https://www.jetro.go.jp/ext_images/_News/releases/2020/78e1380c5007c270/us_2002061400.pdf