上場企業の不適切会計開示、過去最多の70社、73件

 東京商工リサーチの調査によると、2019年に「不適切な会計・経理」を開示した上場企業は70社(前年比29.6%増)、案件は73件(同35.2%増)だったことが判明した。集計を開始した2008年は25社だった。その後、増勢をたどり、2016年に過去最多の57社(58件)を記録した。2017年は53社、2018年は54社と落ち着いていたが、2019年は再び増加に転じ70社、73件とともに過去最多記録を塗り替えた。

 上場企業は国内市場の成熟から、メーカーは売上拡大を海外市場に求める動きを強めている。だが、拡大する営業網にグループ会社のガバナンスが徹底せず、子会社や関係会社に起因する不適切会計の開示に追い込まれる企業が増えた。(株)MTGは2019年5月、中国子会社の不適切会計を開示したが、同年11月にも韓国子会社での不適切会計の可能性について開示した。

 企業会計は、当然だが厳格な運用を求められるが、経営側に時価会計や連結会計など厳格な会計知識が欠如すると、現場で会計処理を誤る事例も生じる。この背景には、現場の人手不足も要因の一つに挙げられる。こうした状況を改善できずに不適切会計を開示した企業もある。藤倉コンポジット(株)は中国子会社の不適切会計処理を開示したが、要因には中国実務に精通する人材不足があったことを理由の一つに挙げている。

 内容別では、最多が「誤り」で31件(構成比42.5%)。(株)明豊エンタープライズは、外部からの指摘で中国プロジェクト貸付債権に関する貸倒引当金の計上を過年度に遡り実施を迫られた。次いで、「架空売上の計上」や「水増し発注」などの「粉飾」で28件。また、子会社・関係会社の役員、従業員の着服横領は14件だった。「会社資金の私的流用」、「商品の不正転売」などで、個人の不祥事にも監査法人は厳格な監査を貫いている。

 発生当事者別では、最多は「会社」の30社(構成比42.9%)だった。会計処理手続きの誤りや事業部門での売上の前倒し計上などのケースがあった。「子会社・関係会社」は25社(同35.7%)で、子会社による売上原価の過少計上や架空取引など、見せかけの売上増や利益捻出のための不正経理が目立つ。「会社」と「子会社・関係会社」を合わせると55社で、社数全体の約8割(同78.6%)と大半を占めた。

 2019年全上場企業「不適切な会計・経理の開示企業」調査は↓

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20200124_01.html