2019年の人手不足倒産185件、4年連続で最多更新

 深刻化する人手不足を背景に、大手企業を中心に従業員の賃金水準を引き上げる動きが進んでいるほか、昨年4月からは働き方改革関連法が施行され、働きやすい環境づくりを優先する企業が増えている。この年末年始には、外食チェーンやスーパー、コンビニで営業時間短縮や店舗休業に取り組む企業が増え、大きな話題となった。一方、こうした対応が困難な企業では、従業員の定着難や採用難から倒産に追い込まれるケースが目立っている。

 帝国データバンクが発表した「人手不足倒産の動向調査」結果によると、2019年1~12月の人手不足倒産は185件(前年比20.9%増)発生し、4年連続で過去最多を更新した。増加率は前年(44.3%増)より縮小したものの、右肩上がりでの推移が続いている。負債総額も326億8800万円にのぼり、過去最大を更新した。負債規模別件数をみると、2019年は「1億円未満」が101件(同11.0%増、構成比54.6%)と、過半を占めた。

 業種別件数をみると、2019年は「サービス業」が前年比31.7%の増加で、最多の54件(構成比29.2%)となった。「建設業」(49件)がこれに続き、この2業種で全体の過半(同55.7%)を占めた。増加率では、「卸売業」(17件)が前年比142.9%増でトップだった。2013年の調査開始以降7年間の件数を業種細分類別にみると、「道路貨物運送」が累計74件で最も多くなっている。

 このうち、2019年は28件(前年比21.7%増)と、トラックドライバーを確保できず、受注難から資金繰りの悪化を招き、倒産に至るケースが増加。以下、「木造建築工事」(43件、2019年16件)、「老人福祉事業」(37件、同5件)、「受託開発ソフトウエア」(29件、同9件)、「労働者派遣」(28件、同5件)と続いた。建築職人、ドライバー、IT技術者、介護スタッフ、美容師など、専門職の定着や確保に窮した小規模企業の倒産が目立つ。

 今年4月からは、働き方改革関連法が1年間の猶予期間を経て中小企業にも適用される。人手不足感の強い建設業や運送業では、時間外労働の上限規制について5年間の猶予が設けられており、労働条件や職場環境の改善が進む企業との格差がさらに広がる可能性もある。高齢化によりベテラン社員の退職などが進むなか、好条件での従業員確保が困難な小規模企業を中心に、さらなる人手不足倒産の発生も懸念されている。

 同調査結果は↓

http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p200104.pdf