「粉飾決算」に起因する倒産 前年比2倍に急増

 東京商工リサーチが8日に発表した「2019年の粉飾決算倒産調査」結果によると、2019年(1~12月)の「コンプライアンス違反」倒産のうち、「粉飾決算」が確認された倒産は18件(前年9件)と、前年から2倍に急増し、2017年(25件)以来、2年ぶりに前年を上回った。調査は2019年の「コンプライアンス違反」倒産のうち、裁判所への申請書類や会社・代理人弁護士への取材で「粉飾決算」が判明したものをまとめたもの。

 粉飾決算に手を染めたきっかけは様々だが、「海外での投資失敗の隠蔽」や「業績低迷(赤字)で取引先からの支払条件が厳しくなった」などの事業上の要因だけでなく、「代表者の相続税を支払うため」など、事業承継に絡む時代を反映した要因も少なくない。また、30年にわたり粉飾決算を続けていた(株)開成コーポレーション(埼玉県・破産)のように、粉飾決算の期間が30年、15年、10年など、長期にわたるケースも目立った。

 粉飾決算は、資金繰りが維持されている間は発覚しにくい。だが、人件費の負担などから資金繰りがひっ迫し、金融機関に借入返済のリスケ(返済猶予)を要請する際、粉飾決算が発覚するケースが増えている。また、倒産ではないが粉飾を続けてきた企業のなかには、金融機関に粉飾決算を明らかにした上で、私的整理の形で再建を目指す企業も散見される。金融機関は収益環境が厳しく、「粉飾決算」への対応を強めている。

 粉飾決算20件を形態別にみると、最多が「破産」の11件(構成比61.1%)で全体の6割を占めた。このほか、「民事再生法」が5件(同27.7%)、「特別清算」と「銀行取引停止処分」が各1件だった。「粉飾倒産」では3社に2社が清算型を選択している。最近はコンプライアンス意識が高まり、粉飾決算に伴う信用失墜は大きいものがある。このため、再建型の民事再生法ではスポンサーによる信用補完で再建を目指す企業が増えている。

 都道府県別では、「東京都」が6件(構成比33.3%)で最も多かった。次いで、「埼玉県」が4件、「福岡県」と「大阪府」、「千葉県」が各2件、「鳥取県」、「富山県」が各1件だった。また、負債別では、「10億円以上」が9件で最も多い。このほか、「1億円以上5億円未満」が6件、「5億円以上10億円未満」が3件だった。

 同調査結果は↓

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20200108_02.html