今春初任給を引き上げた企業は57%と2年連続6割弱

 日本経団連が10月29日に発表した「2019年3月卒の新規学卒者決定初任給調査」結果(有効回答数498社)によると、今年3月に卒業した新規学卒者の新入社員の初任給を前年より「引き上げた」企業は57.2%と、前年(59.0%)より若干減少したものの、2年連続で6割弱の高水準となった。内訳としては、求人段階では前年の初任給を示したものの、「賃金改定後引上げた」が76.7%と大勢を占める傾向に変化はない。

 一方、初任給を据え置いた企業の割合は、1994年(17.6%)~2003年(91.4%)にかけて多少の変動をしながら増加。04年(88.3%)~08年(52.0%)は景気回復等により減少傾向となったが、08年秋からの世界同時不況等の影響で09年(87.0%)に急増し、以降10年から13年まで4年連続で9割を超えていた。今年は、18年(40.8%)から1.6ポイント増加し、42.4%にやや上昇した。

 初任給の決定に当たって最も考慮した判断要因は、この項目の調査を開始した2007年以降、「世間相場」(27.9%)と回答する企業が最も多く、「在籍者とのバランスや新卒者の職務価値」(21.1%)が2番目に多い傾向に変化はないが、「人材を確保する観点」から決めた企業(20.9%)については、2012年(7.7%)から7年連続で増加を続け、今回初めて2割を超えた。人手不足がより深刻化していることが影響しているとみられている。

 学歴別の初任給の引上げ額は、「高専卒・技術系」2078円(前年比+349円)が最も高く、次いで、「短大卒・事務系」1954円(同+221円)、「短大卒・技術系」1930円(同+208円)となっている。引上げ率は、0.72%(前年0.76%)~1.11%(同1.16%)と、ほぼ横ばい。学歴別にみると、「大学院卒」と「大学卒」は1%未満、「高専卒」と「短大卒」及び「高校卒」は、高校卒・現業系を除いて1%超となっている。

 大学卒・事務系の初任給を産業別にみると、製造業平均は21万5374円で全産業平均(21万7981円)を下回り、個別では9産業すべてが全産業平均を下回った。一方、非製造業平均は22万1127円と全産業平均を上回り、6産業中、「土木建設業」(22万4522円)、「金融・保険業」(22万3677円)、「運輸・通信業」(22万3668円)、「卸売・小売業」(22万3306円)の4産業で全産業平均を上回った。

 同初任給調査は↓

http://www.keidanren.or.jp/policy/2019/088.pdf