19年上場企業「希望・早期退職」、6年ぶり1万人超

 東京商工リサーチの調査によると、2019年1月~9月に希望・早期退職者を募集した上場企業は27社に達し、対象人数は1万342人と6年ぶりに1万人を超えたことが分かった。社数はすでに2018年の12社を大幅に上回り、2014年の32社に迫っている。また、人数も2010年の1万2223人を超える勢い。同調査は、2019年1月以降に希望・早期退職者募集の実施を情報開示し、具体的な内容を確認できた上場企業を対象に抽出したもの。

 業種別では、業績不振が目立つ「電気機器」が8社でトップ。次いで、薬価引下げや国外メーカーのライセンス販売終了などを控えた「製薬」が4社で続く。「卸売」は3社で、内訳は靴卸売が2社、衣料品卸売が1社で、いずれも業績が精彩を欠くアパレル関連だった。一方、業績が好調な企業が将来を見越した「先行型」の募集を実施するケースも目立つようになった。

 2019年1月から9月までに希望・早期退職者の募集実施を公表したのは27社。募集人数は合計1万342人(判明分)に達し、2013年(1~12月、1万782人)に迫っている。早期希望退職者の募集人数は、最多は「富士通」の2850人。次いで、非開示だが取材で判明した「ルネサスエレクトロニクス」の約1500人、経営再建中の「ジャパンディスプレイ」の約1200人、子会社の売却、事業など選択・集中を進める「東芝」が1060人と続く。

 また、業績が好調なキリンホールディングス(HD)が、2019年10~11月にキリンHDと中核会社のキリンビールで早期退職者の募集を発表(未集計)、年末にかけてさらに応募・募集人数が増えることが確実になった。また、2019年に希望・早期退職者募集を実施した27社のうち、直近決算(通期)で最終赤字は12社、減収減益は6社、合計18社(構成比66.6%)が業績不振だった。

  ただ、アステラス製薬や中外製薬、カシオ計算機、キリンHDなど、業績が堅調な企業が先を見据えた「先行型」の募集も目立つ。バブル期に大量入社した40代から50代社員による年齢構成の“逆ピラミッド状態”の是正のほか、事業の絞込み(選択と集中)、外部人材の登用による活性化など、新陳代謝を急ぐ企業が増えている。