帝国データバンクがこのほど発表した「後継者難倒産の動向調査」結果によると、2019年1~9月累計の後継者難倒産は325件発生し、前年同期比12.8%の増加となった。件数は2年連続で前年同期を上回り、調査を開始した2013年1月以降、1~9月累計としては過去最多で、年間最多だった2013年の411件を更新するペースで推移している。また、負債総額は前年同期比1.2%の微減で、333億8300万円にのぼった。
2019年1~9月累計の倒産件数全体(6137件)が前年同期を2.6%上回るなか、後継者難倒産の増加率(12.8%)は、それをさらに上回っている。調査開始以降の6年9ヵ月間累計では、件数は2539件、負債総額は3525億4800万円にのぼった。代表の体調不良などをきっかけに業績不振に陥り、事業継続を断念せざるを得なくなった企業や、後継者不在で廃業を当初予定していたが、債務を整理できず倒産に追い込まれた企業などが目立つ。
負債規模別件数をみると、2019年1~9月累計は負債「1億円未満」が228件と、前年同期比15.7%増加し、構成比は7割超を占め突出している。経営者個人に経営ノウハウや取引先、人脈などを大きく依存する小規模企業では、経営者の突然の体調不良や死亡などを機に業績不振に陥り、倒産に追い込まれるケースが目立つ。また、後継者不在で廃業を当初予定していたが、円滑な廃業を選択できなくなった企業などによる倒産も散見される。
業歴別件数では、2019年1~9月累計は業歴「30年以上」で最多の166 件(前年同期比14.5%増)発生し、構成比は51.1%と過半を占めた。比較的若い経営者が多い業歴「10年未満」でも34件(同21.4%増)と散発し全体の1割を占めるなど、業歴を問わず後継者難問題は深刻化しているといえる。業歴「10年以上20年未満」は58件(同16.0%増)、構成比17.8%、業歴「20年以上30年未満」は67件(同3.1%増)、同20.6%だった。
経済産業省は今年8月、来年度の経済産業政策の重点や税制改正の要望ポイントを公表し、親族以外の第三者による事業承継の促進や、事業承継時の経営者保証を不要とする新たな信用保証メニュー創設などを掲げた。円滑な事業承継に向けた施策は年々厚みを増してきているものの、経営者の高齢化や後継者不在が進むなか、今後も後継者難倒産は増加基調で推移する可能性が高く、その動向が注目されている。
同調査結果は↓