本年の「喫茶店」倒産は過去20年間で3番目の高水準

 「喫茶店(カフェ)」の倒産が増加している。東京商工リサーチが発表した2019年(1~8月)の「喫茶店」の倒産状況によると、本年8月まで累計の「喫茶店」の倒産は42件、前年同期比35.4%増と大幅に増加した。このままのペースで推移すると、過去20年で年間最多を記録した2011年の70件に迫る勢いだ。10月には消費増税が実施されるが、軽減税率は適用されない喫茶店の倒産、廃業をさらに加速させる恐れがある。

 喫茶店の年間倒産は、2005年から急増、2011年は、東日本大震災後の消費マインドの低迷とコーヒー豆価格の高騰等で、20年間で最多の70件を記録。2011年の増加後は、豆価格も落ち着き、倒産は一進一退をたどってきた。ところが、人手不足で従業員の確保が難しくなるなか、大手コーヒーチェーンやコンビニとの顧客争奪戦が激化、小規模な喫茶店の脱落が目立つようになり、2019年は8ヵ月間で42件と急増の事態を招いている。

 倒産した喫茶店の負債合計は10億2800万円(前年同期比91.4%増)だった。負債10億円以上の大型倒産はなく(前年同期ゼロ件)、負債1億円未満が40件(同30件)と9割超(95.2%)を占めた。特に、同5千万円未満が全体の88.0%を占め、ほとんどが個人・零細規模だった。資本金別では、「個人企業ほか」が27件(前年同期比22.7%増、構成比64.2%)と、小・零細規模の喫茶店が6割半ばを占めた。

 全日本コーヒー協会の統計データによると、喫茶店の全盛期はバブル景気にまっしぐらの1981年(昭和56年)。全国に15万4630店あったが、バブル崩壊後は店舗数が減少をたどり、2016年は6万7198店と、ピーク時から56.5%減少した。だが、従業員数はピークだった1981年の57万5,68人から、2016年は32万8893人と42.8%減少にとどまり、店舗数の減少率に届かない。これが喫茶店を苦境に追い込むもう一つの要因でもある。

 人件費などのコスト削減に限界を抱えた「喫茶店」は、労働集約型のビジネスモデルの典型でもある。人手不足とともにコーヒーの香りと人の温もりを感じられる空間が、街から消えようとしている。総務省の家計調査によると、1世帯当たりの年間「喫茶代」は2004年の5355円から2012年の5016円まで減少。ところが、2013年から再び増加に転じ、2018年は6761円と右肩上がりを持続している。こうした中で、喫茶店は冬の時代が続く。

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