東京商工リサーチが発表した「国内銀行の総資金利ざや調査」結果によると、国内銀行111行の2019年3月期決算の「総資金利ざや(中央値)」は0.14%だった。前年同期の0.15%より0.01ポイント低下し、2010年3月期以降では、2017年3月期(0.13%)に次ぐ2番目の低水準。2016年2月に日本銀行がマイナス金利を導入した以降は、金融機関の低金利競争が厳しく、金利収入の中心である「貸出金利回り」の低下は続いている。
「総資金利ざや」は、資金の運用利回りと調達利回りとの差を示している。低金利が続くなかで貸出による利回りは低調に推移している。貸出金利の上昇が望めないなか、手数料収入や後継者不足などの課題を抱える中小企業へのM&Aなどのコンサルティング業務など、金利収入以外の新たな収益源の確保が急がれる。こうしたなか、「資金調達」が「資金運用」より利回りが高くなる「逆ざや」は14行だった。
2010年3月期の「総資金利ざや」は0.27%だった。その後、総資金利ざやは年々低下を続け、16年2月の日本銀行のマイナス金利導入後の17年3月期には、0.18%から0.13%へ急激に低下。18年3月期には、貸家向けなどの不動産への貸出やカードローンなど貸出金利が確保できる融資を伸ばしたことで総資金利ざやは上昇に転じた。しかし、19年3月期には投資用不動産向けなどの融資の抑制などで再び総資金利ざやは低下に転じた。
111行の2019年3月期の「総資金利ざや」は59行(構成比53.1%、前年同期62行)が前年同期より「総資金利ざや」が拡大した。ただ、「総資金利ざや」が拡大した銀行の多くは、「資金運用利回り」の拡大が大きく寄与したわけではない。「資金運用利回り」の中央値は1.05%(前年同期1.08%)で、前年同期よりも0.03ポイント低下。111行のうち、93行(構成比83.7%、前年同期91行)で、「資金運用利回り」が低下した。
また、111行の2019年3月期で「総資金利ざや」がマイナスになった「逆ざや」は、14行(大手行2行、地方銀行7行、第二地銀5行)だった。これまで、3月期での「逆ざや」は、2016年12月に日本銀行がマイナス金利を導入した直後の2017年には20行に急増。その後の2018年は16行、2019年は14行と、2年連続で「逆ざや」の銀行は減少したが、依然として銀行の本業収益の低迷が続いている。
同調査結果は↓