東京商工リサーチがこのほど発表した「国内銀行の地方公共団体・中小企業等向け貸出金残高調査」結果によると、国内銀行111行の2019年3月期の総貸出金残高は465兆3731億円(前年同期比4.4%増)で、2012年3月期から8年連続で増加した。このうち、地方公共団体向けは31兆1243億円(同0.8%増)で9年連続で増加、中小企業等向けは320兆3439億円(同3.1%増)で8年連続で増加した。
貸出金の伸び率は、地公体向けが前年同期(4.5%増)より3.7ポイントダウンした一方、中小企業等向けは前年同期(2.9%増)より0.2ポイントアップし、好対照となった。総貸出金残高に対し、地公体向け貸出金の占める割合は6.68%(前年同期6.92%)で、調査を開始した2010年3月期以降、3月期では初めて前年同期を下回った。また、中小企業等向けの貸出比率は68.83%(同69.68%)で、3月期では2年ぶりに68%台に低下した。
中小企業等向け貸出金残高で前年同期より中小企業等向け貸出が伸びたのは102行(構成比91.8%)。前年同期の105行から3行減少したが、高水準を持続している。内訳は、大手行が6行(前年同期5行)、地方銀行が60行(同63行)、第二地銀が36行(同37行)。 中小企業等向け貸出金の伸び率トップは、「百五銀行」(前年同期比11.8%増)。同行の中小企業等向け貸出金は2兆4488億円で、貸出金に占める構成比は71.1%。
次いで、「西京銀行」(前年同期比9.7%増)、「北國銀行」(同8.8%増)、「三菱UFJ銀行」(同8.64%増)、「あおぞら銀行」(同8.61%増)と続く。一方、減少率トップは、「スルガ銀行」(同9.0%減)だった。また、中小企業等向け貸出比率のトップは、「スルガ銀行」の98.4%で、10年連続でトップ。次いで、「大正銀行」94.5%、「関西アーバン銀行」94.1%、「南日本銀行」93.6%の順。上位10行のうち、第二地銀が8行を占めた。
中小企業等向け貸出金は、全業態で前年同期を上回った。取引先企業の経営再建への取組みや他行からの借換えなどを積極的に促し、貸出金を伸ばしている。金融機関は企業の将来性を判断する「事業性評価」に基づく貸出に動き出し、中小企業の事業改善の実現を独自に判断し始めている。だが、低金利で厳しい収益環境のなか、中小企業の経営再建や休廃業、事業承継などの支援にどう取り組むか、今後は金融機関の本当の力量が試される。
同調査結果は↓