東京商工リサーチがこのほど発表した2019年上半期の老人福祉・介護事業の倒産状況によると、同期の「老人福祉・介護事業」の倒産は55件だった。年上半期では2018年同期から2年連続で前年同期を上回り、介護保険法が施行された2000年以降では、年上半期で最多を記録。なかでも、ヘルパー不足が深刻な訪問介護事業者の倒産が急増した。この状況で推移すると、2000年以降で年間最多の2017年(111件)を上回る可能性が出てきた。
負債総額も109億9300万円(前年同期比272.0%増)と急増。負債が膨らんだのは、有料老人ホーム経営、「(株)未来設計」(東京都中央区、民事再生)の負債53億8600万円など大型倒産が押し上げたことが要因。未来設計は、粉飾決算などの不適切会計が発覚し、信用が低下した。ただ、倒産した55件のうち、負債1億円未満は44件(同25.7%増)と大幅に増加し、全体の8割を小規模事業者が占めた。
2019年上半期は、「訪問介護事業」が前年の18件から32件(前年同期比77.7%増)に急増。2018年12月、全国ホームヘルパー協議会が公表したアンケート結果によると、「(ヘルパーを)募集しても応募がない」と人材面の課題を回答した訪問介護事業者は約9割(構成比88.0%)にのぼった。業種別では、最多が「訪問介護事業」の32件、次いで、デイサービスなどの「通所・短期入所介護事業」が13件、「有料老人ホーム」が5件だった。
原因別では、最多が「販売不振(売上不振)」の40件(前年同期比53.8%増)、次いで、「事業上の失敗」(同50.0%減)と「運転資金の欠乏」(同100.0%増)が各4件。「金利負担の増加」と「既往のシワ寄せ」(赤字累積)が各2件で続く。設立別では、2014年以降の設立5年未満が17件(構成比30.9%)と3割を占め、新規参入の事業者が目立った。また、従業員数では、5人未満が36件(同38.4%増)で、全体の約7割を占めた。
形態別では、事業消滅型の破産が51件(前年同期比24.3%増)と全体の9割(構成比92.7%)を占めた。一方、再建型の民事再生法は1件(前年同期3件)にとどまり、業績不振に陥った小・零細企業の再生が難しいことを示している。地区別では、全国9地区のうち、四国を除く8地区で倒産が発生。最多は「近畿」の16件、次いで、「関東」15件、「中部」6件、「中国」と「九州」各5件、「東北」と「北海道」各3件と続く。
この件は↓