2018年の我が国経済は緩やかな回復基調にあり、中小企業の経常利益は過去最高の水準を維持している。他方で、休廃業・解散件数は増加傾向にあり、中小企業の数は年々減少している。東京商工リサーは、この4月に公表された「2019年版中小企業白書」の中から、中小企業の動向、経営資源の引継ぎ、構造変化への対応及び防災・減災対策について取り上げ、今回は導入として中小企業の動向について分析し紹介している。
それによると、中小企業の経常利益はリーマン・ショック直後に大きく落ち込んだが、その後は緩やかな回復基調が続いている。2018年の動きをみると、やや横ばいに転じたきらいもあるが、過去最高水準となった2017年とほぼ同水準で推移。また、良好な資金繰り環境が功を奏し、倒産件数は2009年以来10年連続で減少し、2018年の倒産件数は8235件と、バブル期の1990年以来28年ぶりの低水準となった。
規模別にみても、中規模企業・小規模企業ともに倒産は減少傾向にある。一方で、経営者の高齢化や後継者不足を背景に休廃業・解散企業は年々増加傾向にあり、2018年では4万6724件にのぼる。こうした現状の中で、我が国の企業数は1999年以降年々減少傾向にあり、直近の2016年には359万者となっている。このうち、中小企業は358万者であり、その内訳は小規模事業者305万者、中規模企業53万者となっている。
2014年から2016年の2年の間に企業数は23万者(6.1%)減少。規模別に内訳をみると、大企業が47者増加する一方、中規模企業が3万者減少、小規模企業が20万者減少しており、特に小規模企業の減少数が大きい。企業数が減少するなか、企業が生み出す付加価値の推移について内訳をみると、2011年から2015年にかけて開業企業によって創出された付加価値額と、廃業企業によって失われた付加価値額にさほど差は生じていない。
一方、存続企業が157.8兆円から192.4兆円へと約35兆円付加価値額を伸ばしており、存続企業が稼ぐ力を身につけているとみられる。我が国全体の稼ぐ力をより強いものとするには、存続企業が付加価値額を増やすことはもちろん、稼ぐ力を持っていながら後継者が確保できず廃業せざるを得ない経営者の事業や経営資源の引継ぎ、新たに創業した企業の創業支援によってこれらの層の付加価値額を伸ばしていくことも重要と指摘する。
最後に、我が国の開廃業の現状については、我が国の開廃業率はともに4%台で推移していたが、2010年以降はその差は年々拡大し、2017年では開業率が5.6%、廃業率が3.5%となっている。我が国の起業活動者の割合は諸外国に比べて低く、起業無関心者の割合は高い一方、我が国は起業に関心を持つ者が起業活動を行う割合は高い。我が国で起業家を増やすためには、まずは起業に関心を持ってもらうことが重要としている。
同2018年度の中小企業の動向は↓