111銀行のリスク管理債権6.4兆円、過去最低を更新

 東京商工リサーチがこのほど発表した「国内111銀行(2019年3月期単独決算)のリスク管理債権状況調査」結果によると、111行の2019年3月期の「リスク管理債権」は合計6兆4459億円だった。前年同期(6兆4644億円)より185億円(0.2%減)減少し、3月期としては過去最低を記録した。貸出金に占めるリスク管理債権比率は1.20%で、前年同期(1.26%)より0.06ポイント改善した。

 リスク管理債権の内訳では、「破綻先債権」が2295億円(前年同期比5.4%減)、「延滞債権」が4兆8742億円(同3.9%増)、「3ヵ月以上延滞債権」が558億円(同11.2%減)、「貸出条件緩和債権」が1兆2859億円(同12.5%減)。唯一増加した「延滞債権」は、シェアハウス問題で揺れたスルガ銀行が2400億円(同1838億円増)、三井住友銀行が3863億円(同574億円増)、みずほ銀行が3,431億円(同435億円増)と増加した。

 「リスク管理債権」合計は、前年同期比で2018年3月期12.6%減→2018年9月中間期8.5%減→2019年3月期0.2%減、と減少幅は縮小。一方、「貸倒引当金」合計は、2018年3月期15.1%減→2018年9月中間期8.0%減→2019年3月期0.1%増と、2019年3月期には2009年9月中間期以来の増加に転じた。業績改善が進まない企業や先行きが不透明な企業も多く、「貸倒引当金」を積み増す銀行が2.8倍に増加したことは注視が必要だ。

 業態別の「リスク管理債権」は、大手行が1兆8179億円(前年同期比12.9%減)と、3月期では調査を開始した2008年以降、初めて2兆円を下回った。第二地銀も9751億円(同2.0%減)と、2年連続で1兆円を下回った。一方、地方銀行は3兆6528億円(同8.0%増)と、唯一、前年同期を上回った。ただ、スルガ銀行を除いたリスク管理債権は3兆2829億円(同0.8%減)と減少している。

 111行の2019年3月期の「貸出金」は537兆1564億円(前年同期比5.0%増)で、2012年3月期以降、8年連続で前年同期を上回った。貸出金の増加率は、調査を開始した2008年3月期以降で最高。111行のうち、大手行が全7行、地方銀行は59行、第二地銀は35行、計101行(構成比90.9%)で貸出金が前年同期を上回った。この背景には、事業性評価に基づく企業の経営再建などへの取組みで貸出を伸ばしたことがあるとみられる。

 111行の2019年3月期の貸倒引当金は2兆7241億円で、前年同期(2兆7207億円)を34億円(前年同期比0.1%増)上回った。これは2009年3月期(同12.5%増)以来、10年ぶりの増加。業態別では、大手行が1兆92億円(同12.7%減)、第二地銀が3106億円(同2.3%減)と前年同期を下回った。一方、地方銀行は1兆4042億円(同12.6%増)で唯一、上回った。

 同調査結果は↓

http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20190607_01.html