日本不動産研究所が発表した「2018年下期の不動産取引市場調査」結果によると、2007年上期に約3兆円に達しピークを迎えた不動産取引市場の規模(取引金額が公表されている取引事例についての取引金額の合計)は、2018年下期は1.6兆円と、ピーク時の約53%まで減少した。同調査において集計対象としているのは、主として法人、J-REIT、証券化対象不動産関係者が関与した投資用不動産・事業用不動産の取引事例。
不動産取引市場は、リーマンショックが生じた2008年下期には約1兆円程度まで市場が縮小し、ピーク時の約1/3の規模となった。政権交代を経た2013年上期以降は2兆円超えと大幅に拡大し、2015年上期まで半期ベースで2.0~2.6 兆円程度で堅調に推移。2015下期は約1.8兆円と大幅に減少も、その後は緩やかな増加傾向で推移し2018年上期には約2.3 兆円となったが、2018年下期は、大型取引等の減少等により、1.6兆円に減少した。
不動産取引市場における地域別の取引金額割合をみると、2016年上期以降、都心5区・東京23 区内の割合が減少してきた。地方でもモノ不足が進行するなか、2017年上期・下期とも、相対的にリスクが高い首都圏の案件が取引対象になり、首都圏の割合が増加。高値圏が続くなか、J-REITや機関投資家は市況悪化時でも安定的なCFを維持できる都心の優良物件への選別投資を進めており、その結果、都心5区の割合は安定している。
不動産取引市場における2001年以降の売買主体別買越・売越状況をみると、J-REITの買越が目立つ。ひとたび、J-REITが不動産を取得すると、売却を行うケースは限定されることから、J-REITへの物件集約が、昨今の不動産取引市場での「モノ不足感」を生み出す要因の一つになっている。2018年に入るとリバランスを進める一方で、スポンサー取引中心に都心の優良物件の取得を続けており、買越額が大幅に増加した。
外資系プレーヤーの取得金額は、2007年上期に約8000億円に達しピークを迎え、当時の国内不動産取引市場を席巻した。2016年下期のトランプ政権誕生以降、外資系ファンド、外資系機関投資家ともに活発な売買を行っており、2017年下期の外資系プレーヤーの取得金額は過去2番目に多い約7300億円に達した。2018年に入ると、外資系プレーヤーの取得金額は減少傾向に転じ、2018年下期は約1200億円となっている。
同調査結果の概要は↓
http://www.reinet.or.jp/wp-content/uploads/2019/04/d49db29d4fd3a86d01fe2a8c0a5b1992.pdf