申告後に、計算誤りなどで納税額が多すぎたと気づいたときは、法定申告期限から5年以内であれば、税務署長に対し減額更正の請求ができる。更正の請求が認められれば、納めすぎた税金は還付される。しかし、この更正の請求による還付がすべてのケースで認められるわけではない。例えば、税額等の計算方法が複数ある場合にその選択を誤ったケースでは、原則として更正の請求は認められない。
ところで、企業にとって黒字申告であることが経営上必要な場合がある。典型的なケースでは、官公庁の仕事を入札する際に法人税をきちんと納めたことを示す納税証明書の提出が義務付けられることが多い。また、銀行から融資を受けるためにも、黒字であるほうが有利となる。そこで、法人の中には事実を仮装して経理した、いわゆる“粉飾決算”に基づき所得金額を過大に申告する法人もある。
数年前には東芝の粉飾決算が話題になった。同社の不適切会計期間による利益の減額修正は1518億円にのぼったという。法人税法では、このような過大な申告が行われた場合には、法人がその後の事業年度の確定した決算で、粉飾事項について修正の経理をし、その決算に基づく確定申告書を提出するまでの間は、たとえ税務調査によって過大申告であることが判明しても、税務署長は減額の更正をしないことができるとされている。
また、減額更生がされても、過大に納付した法人税が直ちに全額還付されるわけではない。過大申告について、減額の更正をしたことにより還付金が生じても、その還付金のうち粉飾決算に関連する税額は、その金額を直ちに還付せず、その更正の日の属する事業年度開始の日前1年以内に開始した事業年度の法人税相当額だけ還付し、残額は、更正の日の属する事業年度以降5年間に納付する法人税額から順次控除することとされている
「後で更正請求をして、納めすぎた税金を還付してもらえばいい」と考える企業もあるかもしれないが、企業側も必要性があって過大申告するわけだから、納めすぎた税金は必要経費と考えて取り戻すなどと思わないほうがいい。もっとも、官公庁発注の仕事を受けるために過大申告するケースでは、ほとんどの企業が始めから少額の黒字申告にとどめているため、実際には面倒な更正の請求をしようとは端から考えてはいないようだ。