役員が会社の土地を時価以外で購入する場合は注意!

 役員が会社から資産を購入する場合には、「時価」で購入した場合以外には税務上問題が生じることになる。土地の時価は、(1)(路線価によるその土地の相続税評価額)÷0.8=時価、(2)(近隣の似たような条件の土地の標準地の公示価格)×(取引対象地の路線価)/(標準地の路線価)=「1平方メートルあたりの土地の時価」で算定し、それが著しく不合理と認められる場合を除き、税務上も容認されているようだ。

 そこで、役員が会社から時価より低い価額で購入した場合、会社側は、税務上、その土地は実際の売却価額ではなく、時価で売却したものとして売却損益を計上することになる。時価と実際の売却価額との差額は、その役員へ役員賞与を支給したことになり、所得税の源泉徴収義務が生じるとともに、法人税の計算上損金不算入とされる。役員賞与とみなされた額は役員の給与所得として、通常の給与に加算されて所得税が課税される。

 例えば、法人名義の時価1億円の土地(取得費4000万円)を役員が6000万円で購入したケースでは、法人は6000万円の益金となり、役員は時価1億円との差額4000万円の経済的利益を受けたことになり、その部分が役員賞与と認定される。役員賞与の4000万円は定期同額給与の規定上、法人の損金とはならず、しかも所得税法上、役員には4000万円の給与所得が発生することになる。

 一方、役員が会社から時価より高い価額で購入した場合も、会社側は、税務上その土地は実際の売却価額ではなく、時価で売却したものとして売却損益を計上することになる。そして、時価と実際の売却価額との差額は、役員からの受贈益として法人税の計算上益金算入される。対して役員側は、税務上、その土地は実際の購入価額ではなく、時価で購入したものとして取り扱われる。

 したがって、将来その土地を役員が売却する場合に、売却価額から差し引ける取得費は、実際の購入価額ではなく購入時の時価ということになる。なお、会社側で受贈益が計上される場合には、その会社の株価上昇による株主に対する贈与とみなされるケースがあるので、注意が必要だ。会社に対して贈与があった場合には、結果として会社の純資産価額が増加し、それに伴ってその会社の発行株式の価額が増加することになるからだ。