帝国データバンクがこのほど発表した「2019年度の賃金動向に関する意識調査」結果(有効回答数9856社)によると、2019年度に正社員の賃金改善(ベースアップや賞与、一時金の引上げ)が「ある」と見込む企業は55.5%と、3年連続で5割を超えた。賃金改善について「ある」が「ない」を9年連続で上回ると同時に、その差も36.4ポイントと非常に大きな状態が続いており、2019年度の賃金動向は概ね改善傾向にある。
2018年度実績では、賃金改善が「あった」企業は69.5%と5年連続で6割を超え、7割近くの企業で賃金改善を実施していた様子がうかがえる。2019年度に賃金改善が「ある」と回答した企業を業界別にみると、「建設」(60.0%)が最も高く、「製造」(59.2%)、「運輸・倉庫」(58.0%)が続いた。他方、「金融」(29.6%)は賃金改善を見込む割合が大きく増加したものの2割台で、調査開始以降14年連続で「ない」が「ある」を上回っている。
2019年度の正社員における賃金改善の具体的内容は、「ベースアップ」が45.6%となり、「賞与(一時金)」は30.3%となった。前回調査(2018年度見込み)と比べると、「賞与(一時金)」は1.5 ポイント減少したが、「ベースアップ」はほぼ横ばいとなった。「ベースアップ」は3年連続で4割台の高水準が続いている。また、「賞与(一時金)」も前年に続き3割台で推移した。
賃金を改善する理由(複数回答)は、「労働力の定着・確保」が初の8割台となる80.4%で過去最高を更新。人手不足を半数超の企業で感じるなど深刻度が増すなか、人材の定着・確保のために賃上げを実施する傾向は一段と強まっており、2015年度以降5年連続で前年を上回った。次いで「自社の業績拡大」(40.9%)が前年から6.1ポイント下回ったほか、「最低賃金の改定」や「消費税率引上げ」などが前年を大きく上回った。
他方、賃金改善が「ない」企業のその理由(複数回答)は、「自社の業績低迷」が52.6%でトップとなったものの、前回調査より3.0 ポイント減少した。賃金改善を行わない理由として業績低迷をあげる企業は4年連続で低下しており、業績面をあげる企業は減少傾向にある。また、新卒採用の増加や定年延長などを含む人件費・労務費の増加や、労働環境の改善といった「人的投資の増強」が22.0%と過去最高を更新した。
同調査結果は↓