消費税率再引上げの平均的家計の負担額は年4.4万円

 第一生命経済研究所が発表したレポート「消費税率再引上げのマクロ的影響」は、来年10月の消費税率引上げによる平均的家計の負担額は年4.4万円と予測した。前回の消費税率3%引上げは、それだけで8兆円以上の負担増になり、家計にも相当大きな負担がとなった。財務省の試算では、次回は消費増税の負担額だけでは税収が5.6 兆円増えるが、軽減税率や子育て世帯の還付もあり、家計全体では2.2兆円程度の負担にとどまる。

 一方、2017年の総務省の「家計調査」を用いて、具体的に平均家計への負担額を試算すると、年間約4.4万円の負担増となる。世帯主の年齢階層別の負担額は、世帯主の年齢が40代~60代の世帯では4万円/年を上回るも、世帯主が30代以下か70代以上ではその額が4万円/年を下回る。世帯の年収階層別では、年収が1500万円以上の世帯では負担額が9万円/年を上回るも、年収200万円未満ではその額が2万円/年を下回ることになる。

 また、内閣府のマクロ計量モデルの乗数をもとに経済成長率への影響を試算すると、引上げの1年前は駆込み需要により+0.4%ポイント経済成長率を押し上げるが、消費税率引上げ後の1年間については、子育て還付の+0.08ポイント押下げを加味しても▲0.7%ポイントも経済成長率を押し下げると試算される。したがって、外部環境にもよるが、無防備で消費税率を引き上げれば相当景気腰折れの可能性が高まるとみている。

 今後の消費税率引上げにおける課題としては、デフレ脱却への影響を指摘している。ESPフォーキャスト調査に基づけば、フォーキャスターのコンセンサス通りに成長した場合は、2019年10月から消費税率を引き上げることになると再度デフレギャップが生じてしまう。2014年4月に消費税率を引き上げた際も、消費税率引上げ直後に安倍政権発足以前の水準までデフレギャップが逆戻りしてしまった経緯がある。

 前回の消費税率引上げでは家計向けの支援策が0.7兆円弱にとどまったことからすれば、家計向けの支援策等、ある程度の予算を配分した対策は不可欠な一方で、社会保障の効率化も必要な策といえる。また、日本も将来的にはインボイスの導入を前提に、標準税率を引き上げる際には軽減税率を引き下げることも検討に値する。将来の消費税率引上げを確実なものにする意味でも、経済のパイが拡大する中での家計負担軽減策は不可決としている。

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