相続法改正で自筆証書遺言の利便性が格段に向上

 今国会において、民法中の相続に関する規定等を改正する法律案が去る7月6日、参議院で可決・成立した。今回の相続法分野に関する改正は、約40年ぶりの大きな見直しとも言われており、実務への影響を与えることは必至。特に、近年静かなブームを迎えていると言われる“終活”の根幹である遺言書作成の実務には、大きな影響を与えるとみられている。主な改正点は、(1)自筆証書遺言の方式緩和、(2)自筆証書遺言の保管制度の創設だ。

 現行制度では、自筆証書遺言を作成する場合は財産目録を含めた全ての記載を全文自書する必要があり、特に財産が多数ある場合は相当な負担となる。また、代筆やパソコン等でタイプしたものを印刷した文書は有効にならず、さらに、文書を修正する場合は、変更する場所を指示し、変更した旨を付記して署名し、変更の場所に押印しなければ効力を生じない。高齢者には作成の負担が大きいばかりか、記載ミスが起こりやすいとの指摘がある。

 そこで改正民法では、財産目録の部分については自書する必要はなく、パソコン等で作成してもよいとされた。ただし、自書していない財産目録については、作成したその全ページに署名及び押印が必要となる。また、財産目録が変更された場合は、別紙として添付していた財産目録を削除し、修正した新しい財産目録を添付する方法で加除訂正を行うことが認められる。ただし、ここでもその全ページに署名及び押印が必要となる。

 自筆証書遺言の保管については、そのほとんどが遺言者自身の家や金庫等で保管されているため、遺言書が発見されなかったり、紛失や偽造・変造のリスクがあることから、遺言者の死後、別の遺言書の存在や遺言書の偽造・変造等を理由に、相続人間で紛争を引き起こしてしまうことも多い。そこで改正民法では、自筆証書遺言を、公的機関である法務局に保管する制度を設けることで、速やかに遺言の有無と内容の確認ができるようになる。

 そのほか、検認手続きの省略がある。検認手続きとは、家庭裁判所が相続人立会いの下で、遺言書を開封し、遺言書の内容を確認することをいう。後日偽造や変造ができないように内容を明確にすることを目的とした手続きだ。現行では、自筆証書遺言が発見されたときに、家庭裁判所による検認手続きが必要だが、改正後は、法務局に保管された自筆証書遺言については、偽造等のおそれがないことから、家庭裁判所による検認手続きは不要となる。