社会保険の適用拡大、33%の事業所が雇用管理見直し

 労働政策研究・研修機構がこのほど発表した「社会保険の適用拡大への対応状況等に関する調査」結果(有効回答数5523社)によると、一定の要件を満たす短時間労働者に対する社会保険の適用拡大が義務づけられた「特定適用事業所等」のうち、社会保険の適用拡大に伴い、雇用管理上、何らかの「見直しを行った」割合は33.0%にとどまり、「(適用拡大の対象者はいたが)特に見直しを行わなかった」割合は32.5%となった。

 見直しを行った事業所の具体的な内容(複数回答)は、「新たな適用を回避するため、対象者の所定労働時間を短縮した」(66.1%)あるいは、「所定労働時間を延長した」(57.6%)との回答が多く、両方を実施した事業所が約半数となった。これに「新規求人に当たり、所定労働時間を(従前の設定より)短縮した」(15.8%)や「新たな適用拡大に伴い、対象者を正社員(短時間正社員を含む)へ転換した」(15.3%)等が続いた

 一方、「特定適用事業所等以外の事業所」(2316社)に、労使合意に基づき社会保険の適用拡大を行うことができる制度特例の認知度を尋ねたところ、57.6%と半数以上の事業所が「内容まで知っている」と回答。制度特例の適用を「既に申請した」(5.6%)、「申請する見通し」(5.6%)の事業所のその理由(複数回答)については、「短時間労働者の処遇を改善し人材の確保・定着を図りたい」(72.6%)が最多となった。

 また、同機構が同時に発表した「社会保険の適用拡大に伴う短時間労働者調査」結果(有効回答数6418人)によると、適用拡大前の第1号被保険者、第3号被保険者等のうち、社会保険の適用拡大に伴い、働き方が「変わった」人は15.8%で、うち54.9%が「厚生年金・健康保険が適用されるよう、かつ手取り収入が増える(維持できる)よう所定労働時間を延長した」と回答し、「適用されないよう所定労働時間を短縮した」(32.7%)を上回った。

 なお、全有効回答労働者(6418人)のうち、就業調整(年収や労働時間の調整)を「行っている」人は27.1%だった。その具体的な内容(複数回答)は、「配偶者の所得税について配偶者控除が受けられるよう、自身の収入を103万円以下に抑えている」(36.5%)が最多で、これに「自身の収入に所得税がかからないよう、非課税限度額(103万円)以下に抑えている」(27.6%)などが続いた。

 同調査結果は↓
http://www.jil.go.jp/press/documents/20180223.pdf