アパートやマンションなどの不動産を貸し付けている場合、家賃が滞納するケースは少なくない。家賃滞納があった場合は当然滞納家賃回収に動くが、それが難しくなれば、可能な限り早く「貸倒損失」の処理が必要になる。というのも、滞納家賃をそのまま放っておくと、滞納家賃は通常、売上計上する必要があり、入金がないにもかかわらず、売上計上され課税対象となり税金を払うことになるからだ。
家賃や地代などの貸倒れ分については、当然経費とすることができる。家賃収入や地代収入の貸倒れが確定したら、その貸倒れが確定した年度の経費(貸倒損失)として処理することが認められている。ただし、これは、不動産所得が事業的規模の事業者のみに適用されることとなっており、事業的規模ではないオーナーは、家賃収入計上の年度まで遡って更生の請求が必要となっている。
貸倒損失として認められるケースには、(1)会社更生、民事再生、破産、未収賃料債務免除を書面通知された等の「法律上の貸倒れ」の場合、(2)借主資産状況や支払能力等からみて担保処分後でも回収できないことが明らかになった「事実上の貸倒れ」の場合、(3)借主が部屋を出て行った後、1年以上経過している場合や、債権取立費用額>未収債権額⇒回収に掛かる費用が滞納家賃を上回る「形式上の貸倒れ」の場合、などがある。
法律上の貸倒れなら分かり易いが、多くの場合、滞納したまま居座るか出ていって行方不明等のケースが多い。その対応は、借主が部屋を出ていった後、1年以上経過してから形式上の貸倒れで処理するか、借主に対し内容証明で債権放棄を通知し法律上の貸倒れで処理するなどになる。税務調査があったときに根拠となる書類が求められるので、滞納者への内容証明郵便等は、税務署に見せられるように保管してく必要がある。
なお、事業に至らない規模の不動産貸付においては、所得税法では、未収家賃が回収不能となった場合、回収不能額のうち、(1)総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額、(2)不動産所得の金額から、回収不能額に相当する総収入金額がなかったものとした場合に計算される不動産所得の金額を控除した残額、のいずれか低い金額に達するまでの金額は、その不動産所得の金額の計算上、なかったものとみなされる。
上記(2)の金額は「控除した残額」との規定なので、「不動産所得の金額」及び「回収不能額に相当する総収入金額がなかったものとした場合に計算される不動産所得の金額」は、それぞれ黒字の場合を前提としており、これらの金額が赤字の場合にはそれぞれゼロ円として計算する。したがって、「不動産所得の金額」が赤字の場合には、なかったものとみなされる金額も生じないことから、回収不能額について更正の請求はできないことになる。