厚生労働省は、2017年度に時間外労働などへの割増賃金を支払っていない企業に対して、労働基準法違反で是正指導した結果を取りまとめ公表した。これは、全国の労働基準監督署が、賃金不払残業に関する労働者からの申告や各種情報に基づき企業への監督指導を行った結果、今年3月までの1年間に不払いだった割増賃金が各労働者に支払われたもののうち、その支払額が1企業で合計100万円以上となった事案を取りまとめたもの。
是正結果によると、是正企業数は前年度を約4割上回る過去最多の1870社、その是正支払金額も同3.5倍で過去最大の446億4195万円だった。業種別にみると、「製造業」が412社(構成比22.0%)で最多、次いで「商業」372社、「保健衛生業」240社、「建設業」202社と続く。1企業当たりの支払われた割増賃金額の平均額は2387万円(前年度943万円)。また、是正企業1870社の対象労働者数は20万5235人(同9万7978人)だった。
対象労働者数を業種別にみると、「運輸交通業」が6万9469人(構成比33.8%)で最多、次いで「製造業」5万6190人、「保健衛生業」2万3776人と続く。労働者1人当たりの支払われた割増賃金額の平均額は22万円だった。是正支払額を業種別にみると、「運輸交通業」が224億598万円(同50.2%)と過半を占めて最多、次いで「製造業」91億4210万円、「保健衛生業」47億7547万円となっている。
賃金不払残業の解消のための取組事例をみると、小売業のA社は、タイムカード打刻後に作業を行うよう指示されているとの労働者からの情報を基に、労基署が立入調査を実施。タイムカードの記録とメールの送信記録とのかい離や労働者からのヒアリング調査などから、タイムカード打刻後も作業が行われており、賃金不払残業の疑いが認められたため、労働時間の実態調査を行うよう指導した。
この結果、A社は、不払となっていた割増賃金を支払った上で、賃金不払残業の解消のため、(1)代表者が「賃金不払残業撲滅」を宣言し、全店舗の店長に方針を説明、(2)賃金不払残業撲滅に係る社内ポスターを作成して掲示、タイムカードの適正打刻に関する研修用DVDを作成し、店長を通じて、全労働者に対する研修を実施、(3)タイムカード打刻後の作業の有無を確認するため、店長が定期的に店舗内を巡回、などの取組みを実施した。