2017年6月1日の「改正酒税法」の施行から1年が経過した。同改正酒税法は、継続的に総販売原価を下回る価格で販売することやリベートの一部規制など、行き過ぎた廉価販売を規制しようというものだが、酒類販売業者の経営に与える影響が注目されていた。そうしたなか、2018年春にはビールメーカー各社が業務用を中心にビール系飲料の値上げを行うなど、経営環境は決して楽ではない。
帝国データバンクがそうした状況を踏まえて実施した「酒類販売業者の倒産動向調査」結果によると、酒類販売業者の2017年度の倒産件数は、前年度比23.1%増の176件と、4年ぶりに増加に転じた。業種別にみると、「酒類卸」(前年度比50.0%増)、「酒類小売」(同33.3%増)、「居酒屋」(同18.9%増)と、いずれも前年度に比べて大幅に増加。特に「居酒屋」は、東日本大震災発生直後でピークとなった2011年度以来の水準となっている。
2017年度の負債総額は、前年度比66.9%増の131億3000万円となり、3年ぶりに増加に転じた。業種別にみると、「酒類卸」が前年度比221.2%増の53億5800万円と3倍以上に増えたほか、「酒類小売」が同61.2%増の21億7200万円、「居酒屋」が同15.4%増の56億円と、いずれも大幅に増加した。また、負債規模別にみると、「1000万~5000万円未満」の倒産件数が前年度比28.2%増の132件で最多となった。
その構成比は75.0%と過去10 年で最も高くなり、最も低かった2009年度(52.9%)と比べて20ポイント以上上昇。また、2017年度における倒産企業全体の「1000万~5000万円未満」の構成比は61.1%で、酒類販売業者の構成比が15ポイント近く高く、小規模の倒産が多くなっている。一方、「50億円以上」の倒産は2009年度以来8年連続で発生しておらず、酒類販売業者においては倒産の小規模化傾向がより顕著に表れている。
以上のように、4年ぶりに酒類販売業者の倒産が増加に転じたが、業界内では、行き過ぎた廉価販売を規制する「改正酒税法」の影響を懸念する声もある。規制により卸価格が上がる一方で、「居酒屋」などでは「消費者の反応を考えると、大幅な値上げはしづらいのでは」との見方もある。今春には、ビールメーカー各社が業務用を中心に値上げに踏み切るなど、特に「居酒屋」業態における今後の倒産動向への影響が懸念されている。
同調査結果は↓
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p180602.pdf