17年度上場企業の不動産売却は5年ぶりの70社割れ

 東京商工リサーチがこのほど発表した「2017年度東証1部・2部上場企業の不動産売却調査」結果によると、会社情報の適時開示ベースで、2017年度に国内不動産(固定資産)の売却契約または引渡しを実施した東証1部、2部上場企業数は、66社(前年度77社)にとどまり、2012年度(60社)以来、5年ぶりに70社を下回ったことが分かった。業種別では、「小売業」が13社で最も多かった。

 上場企業の不動産売却が減少したのは、(1)上場企業の業績が軒並み好調なこと、(2)内部留保が潤沢なうえに低金利での資金調達環境が続いていること、(3)資産リストラが一巡していることなどを背景に、所有不動産の売却を急ぐ必要がなかったことなどが要因とみられる。さらに、買主サイドでも、不動産価格の高値警戒感や、投資対象物件の流通が少ない状況が取引を慎重にさせたとみられている。

 2017年度の売却土地総面積は、内容を公表した55社合計で61万4900平方メートル。単純比較で前年度(公表69社合計:133万6532平方メートル)より53.9%減らした。また、売却土地面積が1万平方メートル以上は16社(前年度17社)で、前年度より大型案件は減少。公表売却土地面積トップは、ガラス繊維大手、「日東紡績」の9万6335平方メートル。保有資産の見直しを行い、千葉県の千葉事業センターの遊休部分を売却した。

 譲渡価額の総額は、公表した28社合計で867億9200万円(見込み額を含む)。トップは「アスクル」の204億円、2位が「ノリタケカンパニーリミテド」の150億円。譲渡損益の総額は、公表した58社合計で1999億5900万円(同)。内訳は、譲渡益計上が56社(前年度60社)で合計2001億7000万円(前年度2324億3000万円)。譲渡益トップは「かんぽ生命保険」の850億3400万円、次いで「不二家」の190億円だった。

 業種別では、最も多いのが「小売業」の13社、次いで「サービス業」が12社、「食料品」が6社、「繊維製品」が5社と続く。業種別の売却土地面積では、「ガラス・土石製品」が16万7664平方メートルでトップ、次いで「小売業」が12万3980平方メートル、「食料品」が7万5311平方メートル、「電気機器」が4万6093平方メートル、「化学」が4万3991平方メートルの順だった。

 以上のように、2017年度の上場企業の不動産売却は、好業績を背景に5年ぶりに70社を割り込んだが、訪日外国人の増加は、新たな観光・商業施設の開発需要が見込まれることで状況を一変させる可能性もある。上場企業では、既存事業の見直しで工場や店舗、事務所などの集約を進める企業が多く、今後は地価上昇を横目に睨みながら、経営資源の有効活用としての不動産売却が増加する可能性を指摘している。

 同調査結果は↓
http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20180510_06.html