「歯科医院」倒産、2017年度は2倍増の20件と急増

 東京商工リサーチが発表した2017年度歯科医院の倒産状況によると、同年度の「歯科医院」倒産は20件で、前年度の11件からほぼ2倍増(前年度比81.8%増)と急増したことが分かった。年度では1994年度の20件以来、23年ぶりに20件台に乗せた。負債総額は11億500万円(同36.2%増)で、年度では5年ぶりに増加したが、負債1億円未満が18件(同125.0%増)と大半を占め、小規模倒産な歯科医院の倒産が多い。

 原因別では、最多は「販売不振」の12件(前年度比33.3%増、前年度9件)で、全体の6割(構成比60.0%)を占めた。次いで、「既往のシワ寄せ」が4件(同300.0%増、同1件)。形態別では、事業消滅型の「破産」が19件(同90.0%増、同10件)と全体の9割(構成比95.0%)を占めた。いったん顧客離れが進んだ歯科医院の再建は容易でないことを示している。再建型の「民事再生法」は1件(前年度同数)だった。

 歯科医師国家試験の合格者は2017年が1983名で、ここ10年間では2010年の2408名をピークに毎年2000名前後で推移している。一方、日本の人口は2008年をピークに減少をたどり、2017年10月1日時点では1億2670万人と前年比0.18%減で減少率は広がっている。国立社会保障・人口問題研究所によると、将来人口(中位推計)は2055年に1億人を割り込む見込みで、経営環境の改善は難しいのが実情だ。

 歯科医院は、開業時の設備投資はリース充当などで自己資本を多く必要としていないため参入のハードルが低く、繁華街や中心部など人の集まる地域で開設が相次ぎ、競合が激化している。一方、人口減による患者減少や歯科衛生士などの人件費上昇も深刻で、小規模な歯科医院が苦境に立たされる厳しい実態を浮き彫りにしている。また、歯科医院間の患者争奪戦は激しく、保険診療だけの経営維持は難しくなっている。

 生き残りをかけて自由診療のインプラントやホワイトニング、美容歯科など、独自色を出した集客競争が繰り広げられている。さらに、ここにきて歯科衛生士、事務スタッフなどの人手確保へのコスト上昇も大きな課題に浮かび上がっている。テナント代や設備投資に加え、詰め物金属など歯材コストも上昇し、歯科医院の経営は年々難しさを増しており、歯科医院の倒産は小規模医院を中心に増加をたどる可能性が高いとみられている。

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