2023年度医療機関の休廃業・解散、709件で過去最多

 帝国データバンクが発表した「医療機関の休廃業・解散動向調査」結果によると、2023年度(2023年4月~2024年3月)は、倒産件数の12.9倍となる709件の休廃業・解散が確認され、過去最多を更新した。10 年前と比較して2.3倍に増えた。背景には経営者の高齢化や後継者不在の問題がある。なかでも「診療所」の増加が著しく、事業を断念するケースは今後さらに増加することが予想される。

 2023年度の医療機関の休廃業・解散件数は、前年度比37.1%増となる709件となった。これまで最多だった2019年度(561件)を148件上回り過去最多を更新した。業態別にみると、「病院」が19件(構成比2.7%)、「診療所」が580件(同81.8%)、「歯科医院」が110件(同15.5%)となり、「診療所」と「歯科医院」が過去最多を更新。10年前と比較して「診療所」は2.4倍、「歯科医院」は2.8倍に増えた。

 2023年度の医療機関の休廃業・解散件数は、同年度に発生した倒産件数(55件)の12.9倍となった。業態別にみると「病院」は6.3倍、「診療所」は20.7倍、「歯科医院」は4.6倍となり、「診療所」の数値が突出して高くなっている。厚生労働省のデータによると、2024年1月末時点の医療機関施設数は、「病院」が8115施設、「診療所」が10万5304施設、「歯科医院」が6万6886施設となっている。

 なかでも診療所は約5万7000店舗とされるコンビニ数の2倍近くもあり、人口減少のなかで競争が熾烈だ。さらに日本医師会の「医業承継実態調査」(2020年1月)によると、診療所における後継者は、「後継者候補がおり、承継について意思確認済み」が21.6%なのに対し、「現段階で後継者候補は存在しない」が50.8%、「後継者候補はいるが、意思確認していない」が27.7%を占め、過半数の施設で後継者候補が存在しない状況となっている。

 また、帝国データバンクの企業概要ファイルによると、2024年に40歳~80歳になる「診療所」経営者の数は、ボリュームゾーンが65歳~77歳頃となって、高齢化が顕著だ。こうした実態を踏まえると、今後、一定期間を経て、代表の高齢化と後継者不在を理由に、事業継続を断念する診療所施設はさらに増える可能性が高い。日本国内は高齢化がさらに深刻化していく一方で「診療所」は相次いで姿を消していくことになるとみている。

 なお、倒産件数も2023年度は55件となり、これまで最多だった2009年度(45件)を10件上回った。業態別にみると、「病院」が3件、「診療所」が28件、「歯科医院」が24件となり、それぞれ過去最多となった。今後、休廃業・解散の増加とともに、高齢経営者の健康問題などをきっかけに法的整理に踏み切る診療所、歯科医院も増加することが予想され、医療機関の倒産件数も引き続き高水準で推移するとみられる。

 同調査結果は

https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p240407.pdf