3月期決算上場企業のGC注記・重要事象記載は58社

 東京商工リサーチがこのほど発表した「2019年3月期決算上場企業の継続企業の前提に関する注記調査」結果によると、2019年3月期決算を発表した上場企業2417社のうち、決算短信で「継続企業の前提に関する注記(ゴーイングコンサーン注記)」(GC注記)を記載した上場企業は21社だった。これは2018年9月中間決算(21社)と同数で、2018年3月期(19社)より2社増加した。

 また、GC注記までには至らないが、事業継続に重要な疑義を生じさせる事象がある場合に記載する「継続企業に関する重要事象」は37社(前年同期36社)だった。GC注記と重要事象が記載された企業数の合計は58社となったが、リーマン・ショック直後の2009年3月期に過去最多の145社を記録。その後は政策支援などの後押しもあって上場企業の倒産が減少に転じるとともに、GC注記・重要事象の記載企業も減少をたどっている。

 中間決算でGC注記を記載した21社のうち、4社のGC注記が外れ、外資系ファンドの傘下入りで上場廃止となった「パイオニア」(元東証1部)が対象外となった。一方、液晶パネル大手の「ジャパンディスプレイ」(東証1部)など5社に新たにGC注記が記載された。ジャパンディスプレイは第3四半期決算までは重要事象の記載にとどまっていたが、2期連続の営業損失、5期連続の最終損失を理由に初めてGC注記を記載した。

 重要事象を記載した企業37社は、2018年9月中間決算(33社)より4社増加。中間決算で記載された33社のうち、10社は解消、2社がGC注記に移行した。また、中間決算で初めてGC注記を記載したプラント工事大手の「千代田化工建設」(東証1部)は、当期末時点で債務超過に転落したが、スポンサー支援による資金調達の合意に至ったとして本決算では重要事象の記載にとどまった。

 GC注記・重要事象の記載企業58社を理由別に分類すると、49社(構成比84.4%)が重要・継続的な売上減、損失計上、営業キャッシュ・フローのマイナスなど「本業不振」が理由。次いで「資金繰り・調達難」が8社(同13.7%)、大幅赤字などで金融機関との融資契約に付随する「財務制限条項に抵触」と「再建計画遂行中・その他」がそれぞれ7社(同12.0%)と続く。売上・損益の悪化など本業で苦戦が続く企業が圧倒的に多い。

GC注記・重要事象の記載企業58社の業種別では、「製造業」が24社(構成比41.3%)で4割を占めた。ジャパンディスプレイなどの大手も含まれるが、大半は中堅規模で、大手の下請けなどが中心。次いで「小売業」10社(同17.2%)、「サービス業」6社(同10.3%)と、消費動向が直接的に影響する業種が並んだ。増税を控え、消費の不透明感が増すなかでこれら企業の動向には今後も注目が集まる。

 同調査結果は↓

http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20190611_01.html