中小企業における「人への投資」は道半ば~信金中金

 信金中央金庫が、中小企業における従業員への教育訓練の実態について、全国の信用金庫の協力を得て四半期ごとに実施している「全国中小企業景気動向調査」の結果を基に考察したレポートによると、中小企業におけるOJT(職場内での実地の訓練)以外の教育訓練の実施状況については、規模によって大きな差がみられた。とりわけ、従業員10人未満の階層では約7割の企業でOJT以外の教育を行っていない。

 この背景には様々な理由により、人材教育に十分に取り組めていない中小企業が存在する。例えば、コメントからも、「新入社員を1から教える経営体力がないため、中途でいい人材がいれば採用を考える」(貸家・貸間、埼玉県)、「教育の余裕がないため即戦力を求めており、リファラル採用を中心に進めている」(ベビー・マタニティ用品小売、長野県)のように経営資源の不足から教育を行っていない企業が存在することが分かる。

 OJT以外の教育訓練を行っていない企業群は、2024年中に賃金を引き上げるとの回答割合、2024年1~3月に設備投資を実施したとの回答割合がいずれも低いといった傾向がみられた。これらの企業群は、様々な理由から、生産性向上に資する取組みにやや消極的な様子がうかがえ、先行き稼ぐ力が他社に比べ劣後するおそれがある。対照的に、人材教育、賃上げ、設備投資などに積極的な企業も存在する。

 実際に、「資格が重要であるため、人材育成のための投資は惜しまない」(総合建設業、山形県)、「業務で必要な資格の取得者が不足しており、資格取得に向けて取り組んでいく」(水道施設工事、岩手県)、「社員への教育を強化しており、賃上げも実施した」(梱包、包装資材卸、栃木県)、「福利厚生の拡大、働きやすい職場づくり、社内教育の充実を通じて人材定着に努める」(電気機器、自動制御機器卸、兵庫県)などのコメントも寄せられている。

 また、コメントからは、信用金庫が企業の人材確保、定着化に向けた対応を後押ししていることも確認できる。具体的には、「福利厚生支援のパッケージを提案中」(金属部品製造、滋賀県)、「2024年問題に関連し、就業規則の見直しなど雇用面でフォロー」(造園工事、和歌山県)、「専門家派遣制度を利用し、雇用に関する知識習得を支援」(美容業、岡山県)などが挙げられている。

 商工中金は、「持てるリソースの限られる中小企業にとって、従業員をはじめとする人的資源を豊かなものにしていくことの重要性は計り知れない。人材に対してどのような教育を行い、資金を投じていくかによって企業そのものの針路は大きく変わってくるであろう。その舵取りをサポートし、進むべき方向性を中小企業とともに目指していくことは、信用金庫が担うべき重要な役割の一つといえるのではないか」とコメントしている。

 この件は

https://www.scbri.jp/reports/newstopics/20240411-post-484.html