2月の「雇調金」不正受給76件、公表累計は1040件

 東京商工リサーチ(TSR)が発表した「雇用調整助成金の不正受給企業調査」結果によると、全国の労働局が2月29日までに公表した「雇用調整助成金」(雇調金)等の不正受給件数は、2020年4月に調査を開始以来、1040件に達した。不正受給の総額は311億4553万円にのぼる。月別では2024年1月が45件、2月は76件と増勢をたどり、2月は月間最多の2023年10月(97件)に次ぐ歴代2番目の高水準だった。

 公表件数は、2023年10月が最多の97件で、2024年2月も歴代2位の76件を記録するなど、まだ沈静化の兆しは見えない。不正受給の内訳は、「雇調金」だけの受給が582件と約6割(構成比55.9%)を占めた。また、パートタイマー等の雇用保険被保険者ではない従業員の休業に支給される「緊急雇用安定助成金」のみが153件(同14.7%)、両方の受給は305件(同29.3%)で約3割を占めた。

 都道府県別では、「東京都」が135件で最も多く、次いで、「大阪府」127件、「愛知県」120件で、上位3都府県が100件を超えた。次いで、「神奈川県」87件、「広島県」52件、「千葉県」51件、「埼玉県」と「福岡県」が各36件、「栃木県」33件、「三重県」29件、「京都府」22件の順。10件以上の公表は26都府県に及び、前回調査(1月発表)より2県増加した。このうち、11都府県で20件を上回った。

 雇調金等の不正受給が公表された1040件のうち、TSRの企業情報データベースで分析可能な776社(個人企業等を除く)を対象に、産業別と業種別で分析したところ、産業別では、「サービス業他」が347社(構成比44.7%)で最も多く、4割を超えた。次いで、「建設業」100社(同12.8%)、「製造業」86社(同11.0%)、「卸売業」58社(同7.4%)、「小売業」(同6.8%)が続く。

 産業を細かく分類した業種別では、「飲食業」が107社(構成比13.7%)で最も多く、「建設業」の100社が続き、上位2業種が100社を超えた。このほか、人材派遣や業務請負を含む「他のサービス業」74社、経営コンサルタント業などの「学術研究,専門・技術サービス業」55社、旅行業や美容業を含む「生活関連サービス業,娯楽業」54社、「運輸業」50社が続く。上位は、コロナ禍で打撃を受けた対面サービスを主体とする業種が目立った。

 TSR企業データベースに登録された776社を業歴別にみると、最多が「10年以上50年未満」の350社(構成比45.1%)、「5年以上10年未満」203社(同26.1%)、「5年未満」115社、「50年以上100年未満」90社、「100年以上」18社の順。業歴10年未満は318社(同40.9%)と4割を占め、うち38社は雇調金の特例措置がスタートした2020年4月以降の設立(創業)で、コロナ禍の業績不振から不正に手を染めたとみられる。

 同調査結果は

https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198450_1527.html