解消されない過剰債務、月商の5.4ヵ月で高止まり

 東京商工リサーチが発表した「国内企業の借入金状況調査」結果によると、決算書が比較可能な3月期決算の企業(2万9803社)の借入金を前期と比較し、2022年3月期決算で前期決算と比べて借入金の増減企業の構成比を算出したところ、借入金が「増加」した企業は25.6%だったのに対し、「減少」は45.4%、「横ばい」は28.8%だった。社数では、減少した企業が増加の1.7倍に達し、構成比では19.8ポイント上回った。

 2019年3月期以降、深刻なコロナ禍を受けて支援策が相次いで実施された。ゼロ・ゼロ融資などの資金繰り支援が本格化した2021年3月期は、「増加」した企業が41.7%に対し、「減少」した企業は31.4%で、10.3ポイント上回った。コロナ前と比べ、増加と減少の構成比がほぼ逆転した。ただ、コロナ関連の支援策が一巡した2022年3月期は、増加と減少の構成比は再び逆転し、増加の構成比は16.1ポイント減少した。

 これは、ゼロ・ゼロ融資の民間金融機関の受付終了に加え、すでに返済が始まった企業や、不測の事態に備えて手元資金を厚くした企業が借入返済に動いたこともあるとみられる。借入金の増減を資本金別で分類し、前期と比較した。2022年3月期決算で借入金が増加したのは、資本金1億円以上(大企業)が26.1%、資本金1億円未満が(中小企業)25.4%で、大きな差はなかった。

 産業別の借入金の状況を比較したところ、2022年3月期決算で借入金が増加した比率が最も高かったのは「農・林・漁・鉱業」の32.9%、以下、「小売業」(30.5%)、「製造業」(28.3%)、「卸売業」(27.6%)、「運輸業」(27.38%)、「不動産業」(27.35%)などと続き、最も低かったのは「情報通信業」(16.5%)で、唯一の10%台だった。前期は10産業のうち、建設業の49.6%を筆頭に、上位5産業で増加の比率が40%を上回っていた。

 また、借入金が月商の何倍に相当するかを示す「借入金月商倍率」(借入金総額÷年間売上高÷12)の5期の推移を比較したところ、コロナ前(2019年3月期~2020年3月期)まではいずれも4.6倍と、同水準で推移していたが、コロナ関連融資の利用が進んだ2021年3月期は5.5倍に跳ね上がった。売上高の減少と、銀行借入の積極利用で借入金月商倍率が高まった。

 借入金の標準的な比率は、業種や業態などにより異なるが、平均するとコロナ禍以降の2021年3月期はおよそ1ヵ月の月商と同額の借入金が増加したことになる。一方、2022年3月期は借入金を減少させた企業が多かったにもかかわらず、借入金月商倍率は5.4倍と微減にとどまった。多くの企業で売上の回復が進まず、借入金月商倍率が高止まりしたまま、過剰債務に陥っている可能性を示唆している。

 同調査結果は↓

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20220930_02.html