国税不服審、2022年1月~3月分の裁決事例を公表

 国税不服審判所はこのほど、2022年1月から3月分の裁決事例を同審判所ホームページ上にある「公表裁決事例要旨」及び「公表裁決事例」に追加し公表した。今回公表された裁決事例は、4事例(所得税法関係2件、法人税法関係1件、相続税法関係1件)と少なめだった。今回は、4事例全てにおいて全部取消し又は一部取消など、納税者の主張の何らかが認められており、実務家にとっても参考となると思われる。

 ここでは、相続税法関係において、原処分庁が、相続税の申告において課税価格に算入されていた被相続人及びその家族名義の各預貯金の口座から出金された現金並びに課税価格に算入されていなかった家族名義の預貯金は相続財産であるとして更正処分等を行ったのに対し、審査請求人らが、その現金及び預貯金は被相続人の配偶者の財産であり相続財産に当たらないなどとして、原処分の全部の取消しを求めた事例を紹介する。

 同事例は、相続税の申告書に計上された預貯金の口座から出金された現金並びに配偶者名義及び次男名義の預貯金について、いずれも被相続人の収入を原資とするものと断定ができないことなどを理由として、被相続人に帰属する相続財産とは認められないとしたもの。原処分庁は、これらの現金・預貯金は、出捐者や被相続人及び配偶者の収入比率などからその帰属を判断すると、いずれも被相続人に帰属する財産である旨主張した。

 しかし裁決は、(1)現金の出金元である申告書に計上された預貯金口座で管理運用されていた預貯金の原資が特定できないことや、配偶者も収入を得ていたと認められることなどからすると、現金には被相続人及び配偶者の収入が混在している可能性を否定できないなか、審判所においても、被相続人及び配偶者の収入比率等により現金を合理的にあん分することもできないと指摘した。

 また、(2)預貯金についても、現金と同様、それらの原資を特定することができず、配偶者が管理運用しており、被相続人の収入が混在している可能性を否定できないなか、被相続人及び配偶者の収入比率等により合理的にあん分できないのだから、申告書に計上された預貯金及び現金の額を超えて、現金、預貯金が被相続人に帰属する相続財産として存在していたと断定はできないと判断して、賦課決定処分を全部取り消している。

 2022年1月から3月分の裁決事例は↓

https://www.kfs.go.jp/service/JP/idx/126.html