損保協会、異常危険準備金制度充実等税制改正を要望

 日本損害保険協会はこのほど、2023年度税制改正要望を発表し、要望には、(1)国際課税ルールの改定における対応、(2)火災保険等に係る異常危険準備金制度の充実、(3)損害保険に係る消費税制上の課題解決、(4)確定拠出年金に係る税制上の措置、(5)破綻保険会社から協定銀行への資産移転に係る不動産取得税の非課税措置の恒久化、(6)地震保険料控除制度の充実などの8項目を盛り込んだ。

 このうち、火災保険等に係る異常危険準備金制度の充実では、2022年度税制改正において、同準備金について、(1)火災保険、風水害保険、(2)貨物保険、運送保険、建設工事保険、動産総合保険、(3)賠償責任保険の3区分に分割し、積立率を、(1)が10%(うち8%は経過措置)、(2)が6%(うち4%は経過措置)、(3)が2%(本則のみ適用)に改正されている。

 しかし、自然災害の激甚化・頻発化の中で火災保険事業の安定的な運営は、国民生活と我が国経済の安定の観点から重要な課題であり、より持続可能性の高い制度へと拡充するべく、適用区分や積立率、洗替保証率等については、不断の見直しが必要との考えを示した。そのため、新制度の再検証を行いつつ、その結果を踏まえ、次年度以降、より適切な制度設計に向けた要望を行うべく、準備を進めていくとした。

 損害保険に係る消費税制上の課題の解決では、損害保険料は消費税の導入以来、「課税することになじまないもの」と位置付けられ非課税とされており、一般事業者であれば認められる仕入れに係る消費税負担の控除(仕入税額控除)が、ほとんど認められない。その結果、損害保険料には代理店手数料や物件費などにかかる消費税相当額が、転嫁せざるを得ない「見えない消費税」として含まれていく構造となっている。

 このことは、国民にとってのわかりにくさとともに「税の累積」・「税の中立性の阻害」という2つの課題を発生させていると指摘。付加価値税制度を導入している諸外国においては、こうした課題を踏まえた制度設計を行い、また影響の緩和策も実施しているとも指摘。わが国においても、税率引上げに伴いこの課題の拡大が懸念されるため、損害保険に係る消費税制上のこれらの課題を解消する抜本的な対策の検討を求めている。

 また、2007年1月に創設された地震保険料控除制度に関しては、未曽有の被害をもたらした東日本大震災の発生以降、我が国を取り巻く地震リスクは、より大きなものに見直されている。これを踏まえ、2017年1月及び2019年1月、2021年1月に地震保険料率の引上げが実施されているため、これらの状況に鑑み「地震保険料控除制度」(控除限度額:所得税5万円、地方税2万5千円)の見直しを検討する必要があるとの考えを示した。

損保協会の税制改正要望は↓https://www.atpress.ne.jp/releases/318245/att_318245_1.pdf