2020年度租特、81項目で適用件数は約209万件

 財務省が今通常国会に提出した「2020年度租税特別措置の適用実態調査結果報告書」によると、2020年度(2020年4月~2021年3月)に終了した事業年度又は連結事業年度において、適用額明細書の提出があった法人数は約137万法人(2019年度約132万法人)で前年度から4.1%増加、適用件数は法人税関係の租税特別措置81項目(同83項目)について約209万件(同約206万件)と同1.4%増加していることが分かった。

 租税特別措置の主な種類ごとにみると、中小企業へ軽減税率(資本金1億円以下の中小企業には年800万円以下の所得に特例で15%(本則の軽減税率は19%)の税率)を適用する「法人税率の特例」(2措置)が、適用件数が約99万件(2019年度比0.3%増)、適用額が3兆9525億円(同▲0.2%減)と最も多い。また、「税額控除」(19措置)は、適用件数が約14.6万件(同▲19.6%減)、適用額が7128億円(同▲14.7%減)だった。

 「税額控除」では、「給与等の引上げ及び設備投資を行った場合等の法人税額の特別控除」が適用件数約10万件、適用額1650億円と最も多いが、適用件数は前年度からは▲27.9%と3割弱減少した。新型コロナウイルス禍により、賃上げが滞ったことが影響したとみられている。「試験研究を行った場合の法人税額の特別控除」は、適用件数が約0.9万件(前年度比▲5.1%減)、適用額が5053億円(同▲9.3%減)だった。

 そのほか、「特別償却」(30措置)が適用件数約4.3万件(2019年度比▲9.9%減)、適用額8134億円(同▲13.1%減)。主な内訳は、「中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却」が約2.3万件(同▲10.5%減)、適用額1999億円(同▲14.5%減)、「中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却」が約1.6万件(同▲9.1%減)、適用額4742億円(同▲16.6%減)と軒並み減少している。

 また、「準備金等」(11措置)は、適用件数が約0.4万件(2019年度比▲70.5%減)と大幅に減少し、適用額が6708億円(同▲29.9%減)となっている。「準備金等」では、「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」が適用件数約64.3万件(同9.7%増)、適用額3607億円(同5.6%増)で最も多く、次いで「特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例」が適用件数約23万件、適用額2780億円で続く。

 なお、適用数の実績が想定外に少ない租税特別措置等は、必要性や将来見込みの検証を徹底する必要があることから、税制改正プロセスでは、総務省による政策評価の点検結果や、財務省の適用実態調査の結果を活用して、租税特別措置の必要性や政策効果を検証している。2022年度税制改正においても、期限が到来する法人税関係租税特別措置について、廃止又は縮減を伴う見直しを行う予定とされている。

 同報告書の概要は↓https://www.mof.go.jp/tax_policy/reference/stm_report/fy2021/gaiyou.pdf