所得税調査、コロナ禍の中“簡易な接触”調査を活用

 国税庁が公表した「2020事務年度の所得税等調査」結果によると、今年6月までの1年間の所得税調査は、前事務年度に比べ16.4%増の50万2千件行われた。そのうち、約56%に当たる27万9千件(前事務年度26万3千件)から▲29.3%の5577億円(同7891億円)の申告漏れ所得を見つけた。その追徴税額は▲35.3%の732億円(同1132億円)。1件平均111万円(同183万円)の申告漏れに対し15万円(同26万円)を追徴した。

 実地調査における特別調査・一般調査(高額・悪質な不正計算が見込まれるものを対象に行う深度ある調査)は、前事務年度に比べ▲56.1%の1万9千件を実施、うち約91%に当たる1万7千件から▲45.3%の総額2770億円の申告漏れ所得を見つけ、▲45.7%の514億円を追徴。件数では全体の3.7%に過ぎないが、申告漏れ所得金額は全体の49.7%を占めた。調査1件当たりの申告漏れは1480万円と、全体平均の111万円を大きく上回る。

 また、実地調査に含まれる着眼調査(資料情報や事業実態の解明を通じて行う短期間の調査)は、前事務年度比▲70.2%の5千件行われ、うち4千件から▲61.2%の222億円の申告漏れを見つけ、19億円を追徴。1件当たり平均申告漏れは436万円。一方、簡易な接触は、28.7%増の47万8千件行われ、うち25万8千件から14.9%増の2586億円の申告漏れを見つけ199億円を追徴。1件当たりの平均申告漏れは54万円だった。

 実地調査トータルでは、前事務年度比▲40.1%の2万4千件の調査を行い、うち2万1千件から▲47.0%の2992億円の申告漏れを見つけ、533億円を追徴。つまり、実地調査件数は全体の4.7%と1割にも満たないが、申告漏れ所得全体の5割強(53.6%)を把握しており、高額・悪質な事案を優先して深度ある調査を的確に実施する一方、短期間で申告漏れ所得等の把握を行う効率的・効果的な所得税調査が実施されていることが裏付けられた。

 今回の所得税調査の特徴は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、調査対象に直接接触する実地調査が大きく制限されたなか、その分、実地調査までには至らないものを電話や来署依頼で済ます“簡易な接触”を活用したことにある。なお、業種別1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な業種は、ワースト3が「プログラマー」(4927万円)、「畜産農業(肉用牛)」(3515万円)、「内科医」(3339万円)と、全て前年ランク外の業種だった。

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https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2021/shotoku_shohi/pdf/shotoku_shohi.pdf