中途退職で年末調整を受けていないときの取扱い

 給与所得者は、通常所得税を毎月の給料やボーナス等から源泉徴収される。この源泉徴収は概算で行うことから、源泉徴収された所得税の合計額は、必ずしもその人が納めるべき年税額と一致せず過不足が生じる。そこで、年末調整によってこの過不足額を精算する。年末調整の対象となるのは“給与所得者の扶養控除等申告書”を年末調整が行われる日までに提出している人が大前提となる。

 さらに提出があった人で、会社などに1年を通して勤務している人や、年の途中で就職をして年末まで勤務している人が対象になる。ただし、年間の給与総額が2000万円を超える人や、災害減免法の規定により、その年の給与に対する所得税及び復興特別所得税の源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた人は、年末調整の対象にならないので、自身で確定申告を行う必要がある。

 基本的には年末まで勤務している人が年末調整の対象だが、年末まで勤務していなくても年末調整が必要な場合がある。例えば、海外支店等への転勤に伴って非居住者となった人や12月に支給されるべき給与等の支払を受けた後に退職した人はその時点で年末調整を行うことになる。大部分の給与所得者はこの年末調整によって所得税の納税が完了するので、原則確定申告は不要だが、年の途中で退職すると所得税が納め過ぎになる場合がある。

 このうち、中途退職した同じ年に再就職をした場合は、原則として新しい勤務先で前の勤務先の給与を含めて年末調整をすることになっているので、所得税の納め過ぎは解消する。しかし、中途退職したまま再就職しない場合は年末調整を受けられないから、所得税は納め過ぎのままとなる。この納め過ぎの所得税は、翌年になってから確定申告をすれば還付を受けることができる。

 この申告は、退職した翌年以降5年以内であれば行うことができるが、申告に必要な添付書類がそろい次第早めに行うことをお勧めしたい。なお、給与所得のある人について、2019年4月1日以後、給与所得の源泉徴収票は、確定申告書への添付又は確定申告書を提出する際の提示が不要となった。ただし、確定申告書を作成する際には引き続き給与所得の源泉徴収票が必要となるので、税務署等へ行く際には忘れずに持参する必要がある。