賃金不払残業、1062社に計約69億円の支払を指導

 厚生労働省は、2020年度に時間外労働などへの割増賃金を支払っていない企業に対して、労働基準法違反で是正指導した結果を取りまとめ公表した。これは、全国の労働基準監督署が、賃金不払残業に関する労働者からの申告や各種情報に基づき企業への監督指導を行った結果、今年3月までの1年間に不払いだった割増賃金が各労働者に支払われたもののうち、その支払額が1企業で合計100万円以上となった事案を取りまとめたもの。

 是正結果によると、是正企業数は前年度を549社下回る1062社、その是正支払金額も同28億5454万円下回る69億8614万円だった。業種別にみると、「製造業」が215社(構成比20.2%)で最多、次いで「商業」190社、「保健衛生業」125社、「建設業」114社と続く。1企業当たりの支払われた割増賃金額の平均額は658万円(前年度611万円)。また、是正企業1062社の対象労働者数は6万5395人(同7万8717人)だった。

 対象労働者数を業種別にみると、「製造業」が1万9786人(構成比30.3%)で最多、次いで「保健衛生業」9614人、「接客娯楽業」8324人、「商業」7564人と続く。労働者1人当たりの支払われた割増賃金額の平均額は11万円だった。是正支払額を業種別にみると、「製造業」が15億364万円(同21.5%)で最多、次いで「教育・研究業」11億6452万円、「保健衛生業」11億3004万円、「商業」7億6539万円となっている。

 賃金不払残業の解消のための取組事例をみると、労働時間記録の不適切な運用がある。その他小売業のA社は、「出勤を記録をせずに働いている者がいる。管理者である店長はこのことを黙認」との情報を基に、労基署が立入調査を実施。ICカードを用いた勤怠システムで退社の記録を行った後も労働を行っている者が監視カメラに記録されていた映像から確認され、賃金不払残業の疑いが認められたため、実態調査を行うよう指導した。

 A社は、(1)労働基準監督官を講師として、各店舗の管理者である店長を対象に労務管理に関する研修会を実施するとともに、店長以外の従業員に対しても会議等の機会を通じて法令遵守教育を行い、賃金不払残業を発生させない企業風土の醸成を図り、(2)社内コンプライアンス組織の指導員を増員して、店舗巡回を行い、抜き打ち調査を行うことにより勤怠記録との乖離がないか確認するなどの取組みを実施した。

 この件は↓

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21200.html