事業所得、総収入金額から差し引ける必要経費の特例

 事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得をいう。個人事業主やタレント、競馬の騎手などの所得は、この事業所得に該当する。ただし、不動産の貸付けや山林の譲渡による所得は事業所得ではなく、原則として不動産所得や山林所得になる。事業所得の金額は、「総収入金額-必要経費」として計算する。

 総収入金額には、それぞれの事業から生ずる売上金額のほかに、次のようなものも含まれる。それには、(1)金銭以外の物や権利その他の経済的利益の価額、(2)商品を自家用に消費した場合や贈与した場合のその商品の価額、(3)商品などの棚卸資産について損失を受けたことにより支払を受ける保険金や損害賠償金等、(4)空箱や作業くずなどの売却代金、(5)ホ 仕入割引やリベート収入などがある。

 また、必要経費とは、収入を得るために直接必要な売上原価や販売費、管理費その他費用のことをいい、例えば、(1)売上原価、(2)給与、賃金、(3)地代、家賃、(4)減価償却費などがある。なお、家事上の経費は必要経費にならないが、家事上の経費に関連する経費のうち、事業所得を生ずべき業務の遂行上必要である部分を明らかに区分することができる場合のその部分に相当する経費の金額は必要経費となる。

 必要経費には特例がある。まず、家内労働者等については、必要経費の額が55万円に満たない場合には、最高55万円(2019年分以前は65万円)まで必要経費とすることができる特例がある。次に、事業主が生計を一にする配偶者その他の親族に支払う給料などは、原則として必要経費に算入できないが、一定の要件に該当する場合には、必要経費に算入することができる「事業に専ら従事する親族がある場合の必要経費の特例」がある。

 具体的には、青色申告者の場合、事業主と生計を一にする配偶者その他の親族が、事業主の事業に従事することができると認められる期間の1/2を超える期間、その事業に専ら従事することにより、税務署長に提出された届出書に記載された範囲内の給与の支払を受けた場合には、事業主はその給与の額のうち労務の対価として適正な金額を事業所得の必要経費に算入することができる。

 また、白色申告者の場合、事業主と生計を一にする配偶者その他の親族が、事業主の事業にその年を通じて6ヵ月を超える期間、その事業に専ら従事した場合には、事業主は、親族1人につき最高50万円(配偶者の場合には最高86万円)を必要経費とみなして、事業所得の計算をすることができる。なお、青色事業専従者も白色事業専従者も配偶者控除及び扶養控除の対象外であることに留意する必要がある。