広告宣伝用資産の受贈益の取扱いには特別の規定あり

 製造業者等が、販売業者等に広告宣伝用資産を無償又は低価額で譲渡する場合がよく見受けられる。原則として、法人が無償による資産の贈与を受けた場合には、その資産の時価が受贈益として益金の額に算入される。有償であっても、その譲受け価額が時価よりも低い場合には、時価と譲受け価額との差額が受贈益となる。ところが、その資産がネオンや看板などを含む広告宣伝用資産については、その性質上特別の取扱いがある。

 それは、広告宣伝用の看板やネオンサインなどのように「専ら広告宣伝のみ」に使用される資産の贈与については、販売店側では受贈益はなかったものとされる税務上の取扱いだ。製造業者側では、取得価額相当額を繰延資産として償却することになる。ただし、自動車や陳列棚、陳列ケース、冷蔵庫、展示用モデルハウスなどのように、「メーカーの広告宣伝+販売業者の便益」に使われる広告宣伝用資産の場合の処理は少々異なる。

 例えば、(1)自動車で車体の大部分に一定の色彩を塗装して製造業者等の製品名や社名を表示し、その広告宣伝を目的としていることが明らかなもの、(2)陳列棚、陳列ケース、冷蔵庫又は容器で、製造業者等の製品名や社名の広告宣伝を目的としているものが明らかなもの、(3)展示用モデルハウスのように、製造業者等の製品の見本であることが明らかなもの、など広告宣伝用資産で別の用途でも使えて、ある程度値段が張るものの場合だ。

 このような広告宣伝用資産の場合には、贈与者である製造業者等の取得価額の3分の2に相当する金額から受贈者側である販売業者等がその資産取得のために支出した金額を控除した金額を受贈益として計上することになる。ただし、その受贈益相当額が30万円以下の場合には、受贈益はないものとして計上は不要となる。一方、製造業者側は、「専ら広告宣伝のみ」のケースと同様に、取得価額相当額を繰延資産として償却することになる。

 上記の30万円以下かどうかは、同一の製造業者等から二以上の資産を取得しているときは、その合計額による。また、販売業者等が製造業者等から広告宣伝用の資産の取得に充てるため金銭の交付を受けた場合については、上記の取扱いを準用する。なお、消費税法上、上記のような贈与については、対価性がないため、課税対象とはならないが、その広告宣伝用資産の購入自体に係る消費税分は仕入控除の対象となるので留意したい。