査察の告発事案は100%有罪、平均懲役月数14.3ヵ月

 査察、いわゆるマルサは、大口・悪質な脱税をしている疑いのある者に対し、犯罪捜査に準じた方法で行われる特別な調査だ。調査にあたる国税査察官には、裁判官の発する許可状を受けて事務所などの捜査をしたり、帳簿などの証拠物件を差し押さえたりする強制捜査を行う権限が与えられる。この査察調査は、単に免れた税金や重加算税などを納めさせるだけでなく、検察への告発を通じて刑罰を科すことを目的としている。

 刑罰とは懲役や罰金だが、実をいえば以前は、実刑判決はなく、執行猶予と罰金刑で済んでいた。しかし、懲りない面々に対し“一罰百戒”効果を高めるため、1980年に初めて実刑判決が出されて以降は、毎年実刑判決が言い渡されている。先般公表された2018年度版査察白書によると、2018年度中に一審判決が言い渡された122件の100%に有罪判決が出され、うち7人に対し執行猶予がつかない実刑判決が言い渡されている。

 実刑判決で最も重いものは、査察事件単独に係るものが懲役4年6ヵ月、他の犯罪と併合されたものが懲役7年だった。A社は、美容関連製品の輸出販売を行うものだが、架空の国内仕入(課税取引)及び架空の輸出売上(免税取引)を計上する方法により、不正に多額の消費税の還付を受けていた。同社の代表者Bは、消費税法及び地方税法違反の罪で、懲役4年6ヵ月の実刑判決を受けた。

 1件当たり犯則税額は6100万円だったが、平均の懲役月数は14.3ヵ月、罰金額は1400万円だった。査察の対象選定は、脱税額1億円が目安といわれ、また、脱税額や悪質度合いの大きさが実刑判決につながる。査察で告発されると、社会的信用を失うだけでなく、巨額な罰金刑や実刑判決もありうる。ちなみに、刑罰は10年以下の懲役に、罰金は1000万円(脱税額が1000万円を超える場合は、脱税相当額)以下となっている。

 2018年度査察白書によると、すでに着手した査察事案について、同年度中に告発の可否を最終的に判断(処理)した件数は182件で、このうち検察庁に告発した件数は66.5%(告発率)にあたる121件だった。ここ5年は60%台の告発率だが、それまではおおむね70%台で推移していた。つまり、査察の対象になると、6~7割程度が実刑判決を含む刑事罰の対象となる。くれぐれも甘い考えを起こさないでいただきたい。