シェアリングエコノミー等新分野の調査事例を公表

 情報通信ネットワークの発展・普及に伴いビジネスの実態が大きく変化し、ヒト・モノ・場所・乗り物・お金など、個人等が所有する資産等をインターネット上のマッチングプラットフォームを介して提供するシェアリングエコノミーや暗号資産(仮想通貨)取引等が増加している。こうした背景から、国税庁は、これらの新分野の経済活動へ的確に対応していく方針を明らかにしたが、その中で、新分野に関する調査事例も公表している。

 まず、インターネット上のプラットフォーマーを介した売買に対する調査事例がある。調査対象者については、チケット転売サイトで購入したチケットを、ネットオークションに出品・売却することで、多額の利益を得ていることが想定されたため、調査を実施。その結果、オークションサイトのID登録のほか、決済口座も親族名義を利用することで、自分の名前が一切表面に出ないよう画策し、申告義務を逃れていたことが判明した。

次に、暗号資産(仮想通貨)取引に対する調査事例だ。調査対象者については、暗号資産(仮想通貨)取引で多額の売買利益を得ていることが想定されるにもかかわらず無申告であったため、調査を実施した。その結果、給与収入を原資として、複数の交換業者を通じて暗号資産(仮想通貨)取引を行っており、これらの取引で得た利益について申告をしていないことが判明した。

 また、クロスボーダー消費税(BtoC取引)の調査事例がある。国外からのデジタルコンテンツ配信等の役務提供に係る消費税、いわゆる「クロスボーダー消費税」に関し、消費者向けの取引(「BtoC取引」)については国外事業者に申告納税義務が課されるが、多くの国外事業者が日本市場に参入している「ゲーム配信」業界について、国内売上ランキングが上位のゲームアプリを開発・販売している国外事業者に関する情報の収集・分析を行った。

 その結果、プラットフォーム事業者を通じて日本のユーザーに対しゲームアプリの配信を行っているゲーム開発業者A(国外事業者)の消費税が無申告となっている事実を把握した。そこで、国外のゲーム開発業者Aに対し、日本のユーザーに対するゲームアプリの配信の対価は消費税の課税対象である国内取引に該当することを指摘したところ、消費税の期限後申告書が提出されている。

 国税庁では、課税上有効な情報収集のため、今後は、新たに整備された情報照会手続きの法的枠組みも積極的に活用して情報収集に努め、適正な課税の確保に向けて取り組んでいく。また、無申告の国外事業者を把握するため、(1)電子商取引に着目したインターネット情報等の分析・検討、(2)外国税務当局との間の情報交換等による連携・協調、などにより、あらゆる機会を通じて情報の収集を行うとともに、その実態解明に努めていく方針だ。