矢野経済研究所が発表した「語学ビジネス市場に関する調査」は、2023年度の語学ビジネス市場規模(主要13分野合計)は、事業者売上高ベースで前年度比0.2%増の7841億円と推計した。分野別に市場をみると、2023年度はコロナ禍の行動制限がさらに緩和されたことで、多くの市場が回復し始めた。語学周辺ビジネスでは、引き続きコロナ禍で低迷した留学斡旋市場が大きく回復し、翻訳・通訳ビジネス市場も回復傾向にある。
一方で、少子化の影響で幼児・子供向けの教室や教材、紙からオンライン媒体へのシフトで成人向けの教室や教材、円安や物価高騰で海外旅行や留学ビジネスへの影響など、各市場の課題が改めて浮き彫りとなった。また、成人向け外国語教室市場のうち、ビジネスニーズではコロナ禍を経て、海外出張や海外赴任をせずともオンラインで商談が出来る環境が整ったことや、円安による海外渡航費の高騰からコスト面で渡航を控える動きもある。
そのため、海外出張や海外赴任といったアウトバウンドニーズに関しては、大きな回復がみられなかった。また、インバウンド(訪日外国人客)を要因としたビジネスニーズについては、行動制限の撤廃に伴い訪日外国人観光客が再び増加しており、航空や旅行などの観光関連産業を中心に外国語教育の需要が高まっている。また、趣味・教養ニーズでは、行動制限の解除により海外旅行の機運が高まっており、ニーズは回復傾向にある。
さらに、感染を避けて教室を休会していた会員の回帰もみられ、シニア層が回復してきているという事業者もみられた。ただし、円安による海外旅行の費用高騰が旅行意欲を下げる要因ともなっているが、コロナ禍の間に海外旅行に行けなかった人々のニーズは高まっており、コロナ禍後の反動増が期待される。語学ビジネス市場は、コロナ禍のマイナス要因であった行動制限が解消したことから引き続き市場回復が進む見込みである。
ただし、円安や物価高の影響といった不確定要素が残るほか、ビジネスのオンライン化による海外渡航や海外赴任の需要減少など、コロナ禍で変化したビジネスニーズの変化への対応が各事業者とも必要となってくる。直近では生成AIを搭載した英会話アプリ等の新たなサービスの登場もあり、他の語学ビジネス市場との距離が近づき、市場間での顧客獲得競争が激化する恐れもあるとみられる。
同調査結果は