月中に発行事業者となった場合のインボイスの交付法

 インボイス発行事業者は、登録日以後の取引について、相手方(課税事業者に限る)の求めに応じて、インボイスを交付する義務が生じる。免税事業者が2023年10月1日から2029年9月30日までの日の属する課税期間において登録を受ける場合、登録日からインボイス発行事業者となる経過措置が設けられている。経過措置は、登録申請書に登録希望日を記載することで、その登録希望日から課税事業者となるもの。

 資産の賃貸借契約に基づいて支払を受ける使用料等の額(前受けに係る額を除く)を対価とする資産の譲渡等の時期は、契約や慣習によりその支払を受けるべき日とすることとされている。そのため、ある月の中途にインボイス発行事業者の登録を受けた場合に、使用料等の支払を受けるべき日が登録日以後となるのであれば、その月分の使用料等の全額につきインボイスを交付することとなる。

 この場合、課税資産の譲渡等がその支払を受けるべき日に行われたこととなるため、その登録を受けた月分の使用料等については、インボイス発行事業者の登録前の期間に係るものについて日割計算などは行わず、全額を課税売上として消費税の申告を行うこととなる。他方、前受けに係るもの(翌月分を前払で受けるようなもの)である場合には、その資産の譲渡等の時期は、原則として現実に資産の譲渡等を行った時となる。

 このため、登録日前の取引と登録日以後の取引に区分するなどの対応が必要となる。この場合、インボイスではない領収書を交付し、登録通知を受け登録日が判明した後に、インボイスとなる部分を区分して交付するなどの方法によることができる。また、棚卸資産の譲渡を行った日は、その引渡しのあった日とされており、引渡しの日がいつであるかについては、例えば、出荷した日、相手方が検収した日となる。

 さらに、相手方において使用収益ができることとなった日、検針等により販売数量を確認した日等、その棚卸資産の種類や性質、その販売に係る契約の内容等に応じてその引渡しの日として合理的と認められる日のうち、事業者が継続して棚卸資産の譲渡等を行ったこととしている日によるものとされている。したがって、継続して棚卸資産の譲渡等を行ったこととしている日が、登録日以後となる取引について、インボイスを交付することとなる。

 なお、役務の提供を行った日は、原則として、その約した役務の全部の提供を完了した日になる。したがって、例えば、保守点検が完了した日が適格請求書発行事業者の登録を受けた日以後であるならば、その保守点検料等の全額につきインボイスを交付することとなる。保守点検が完了した日がインボイス発行事業者の登録を受けた日以後である場合、その保守点検料については、全額を課税売上げとして消費税の申告を行うこととなる。