コメ農家の倒産・廃業が急増、過去最多を更新へ

 帝国データバンクが発表した「米作農業」の倒産・休廃業解散動向によると、全国的なコメ不足と価格高騰のなか、米作農家の倒産や廃業に歯止めがかからない。24年1~8月に発生した米作農業(コメ農家)の倒産(負債1000万円以上、法的整理)が6件、休廃業・解散(廃業)が28件発生し、計34件が生産現場から消滅した。倒産・廃業の件数は23年通年の件数(35件)を大幅に上回り年間最多が確実で、初の年間40件台到達も想定される。

 主食用のコメを生産するコメ農家で倒産や廃業が相次ぐ背景には、生産コストの上昇と深刻な後継者・就農者不足があげられる。農林水産省の調査によると、2023年における農業に必要な生産資材の価格は、20年平均に比べて1.2倍に上昇した。なかでも、原料の多くを輸入に頼る肥料は1.5倍、ガソリン・軽油の値上がりで光熱動力費は1.2倍、農業薬剤は1.1倍と、主な資材のほとんどが値上がりした。

 他方で、国内の主食用米の消費量減少などを背景に販売価格への転嫁が難しく、利益が残らないことから翌年の苗床やトラクターなどの機材調達費用が捻出できず、コメづくりを断念するケースも多かったとみられている。また、小規模なコメ農家においては、就農者の高齢化や離農が進む一方、次世代の担い手が見つからないなど後継者不足の問題が顕在化している。

 足元では主食用米の価格は上昇しているほか、低農薬米や無農薬米など高付加価値米の需要拡大などで業績を伸ばすコメ農家もある。また、JAを中心に新規就農支援の取組みが進むなど、後継者不足に悩む生産基盤の強化が進んでいる。ただ、資材高騰と値上げ難で農家が経営をあきらめる状況が続けば、将来的に主食のコメが安定的に供給できなくなる可能性もある。