価格転嫁率、過去最高の44.9%、業種間で広がる格差

 帝国データバンクが発表した「価格転嫁に関する実態調査」結果(有効回答数1万1282社)によると、自社の主な商品・サービスにおいて、コストの上昇分を販売価格やサービス料金にどの程度転嫁できているかについては、コストの上昇分に対して『多少なりとも価格転嫁できている』企業は78.4%と8割近くにのぼった。内訳をみると、「2割未満」が19.6%、「2割以上5割未満」が18.6%、「5割以上8割未満」が20.2%で2割を超えた。

 さらに、「8割以上」が15.5%、「10割すべて転嫁できている」企業は4.6%だった。他方、「全く価格転嫁できない」企業は10.9%と前回調査(2024年2月)から1.8ポイント減少した。「厳しい競争環境があり、コストを転嫁すれば顧客を失ってしまう」(機械・器具卸売、愛媛県)などの意見も聞かれ、依然として全く価格転嫁ができていない企業が1割を超えている。

 また、コスト上昇分に対する販売価格への転嫁度合いを示す「価格転嫁率」は44.9%。これはコストが100円上昇した場合に44.9円しか販売価格に反映できず、残りの5割以上を企業が負担していることを示している。企業からは、「価格高騰がユーザー目線でも一般化してきたため、価格転嫁が進んでいる」(建設、熊本県)といった声が聞かれ、値上げに対する社会全体の受入れや取引先の理解などで、前回調査から4.3円分転嫁が進展した。

 価格転嫁率が高い主な業種では、「化学品卸売」(65.0%)や「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」(63.0%)などで6割を超えた。他方、一般病院や老人福祉事業といった「医療・福祉・保健衛生」(19.8%)が2割を下回ったほか、「娯楽サービス」(21.7%)、「金融」(25.8%)、「農・林・水産」(27.3%)などで価格転嫁率は低水準だった。また、サプライチェーン別に価格転嫁の動向をみると、前回調査と比較して、全般的にやや価格転嫁は進展している。

 とりわけ、サプライチェーン全体に関わる『運輸・倉庫』(34.9%)は3割台に到達。企業からも「物流の2024年問題の後押しもあり、取引先との交渉がスムーズにいくことが多い」(運輸・倉庫、愛知県)といった声が聞かれ、2024年問題への対応が追い風になっている様子がうかがえた。

 同調査結果は

https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p240815.pdf