「重要なものの記載が不十分である」として請求を棄却

 国外財産又は財産債務に係る過少申告加算税等の特例による加重措置の対象となる「重要なものの記載が不十分であると認められる場合」を巡って争われた事案で、国税不服審判所は、国外財産調書又は財産債務調書の記載内容により判断すべきとした上で、請求人が提出した調書は「記載すべき事項のうち重要なものの記載が不十分である」ものと認められるとして、審査請求を棄却した。

 この事案は、審査請求人が、2019年分ないし2021年分の所得税等について、国外財産等に関して生じる所得の申告漏れ等があったとして修正申告書の提出をしたが、原処分庁が、内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律に規定する国外財産又は財産債務に係る過少申告加算税の特例による加重措置を適用して過少申告加算税の賦課決定処分をしたのに対し、請求人が、原処分の一部取消しを求めたものだ。

 つまり、この事案は、確定申告書の内容等から国外財産調書又は財産債務調書に記載すべき財産が特定できる場合であっても、納税者が提出した国外財産調書又は財産債務調書の記載内容からその財産の特定が困難なときは、国外財産又は財産債務に係る過少申告加算税又は無申告加算税の特例による加重措置が適用されるとしたもの。

 請求人は、請求人がした修正申告の基因となった財産から生ずる所得について確定申告をしていたことや、原処分庁所属の調査担当職員から本件財産について確認があったことなどからすると、本件財産は既に特定済みであるため、加算税の額が加算されることとなる国外財産調書又は財産債務調書に記載すべき事項のうち重要なものの記載が不十分である場合には該当しない旨主張した。

 しかしながら裁決は、「重要なものの記載が不十分である」か否かを含めて、国外財産軽減加重措置又は財産債務軽減加重措置の適用の可否の判断は、国外財産調書又は財産債務調書自体の記載内容から行うべきであり、これらの記載内容に基づくと、本件において「重要なものの記載が不十分である」と認められることから、請求人の主張は理由がないとの判断を示した。

 加算税加重措置の適用の可否の判断は、国外財産調書又は財産債務調書の記載内容から行うべきだが、請求人が提出したこれらの調書には本件財産に係る記載事項に誤りや記載漏れがあり、その記載内容からは本件財産の特定が困難であると認められると指摘。したがって、「記載すべき事項のうち重要なものの記載が不十分である」ものと認められるから、修正申告に係る過少申告加算税について加算税加重措置が適用されるとした。

(令和5年12月7日裁決)